第56話 馬鹿なの? ページ31
『____________馬鹿なの?』
森さんも流石にこの言葉は予測してなかったのだろう。目を開くと冷たい眼差しでボクをにらんだ。
「提案を暴言で返すとは、そう言う常識知らずな所は変わらないねぇ」
『休戦中の敵の社員を勧誘しようとしている常識知らずな人も此処にいるねぇ』
同じ口調で嫌味ったらしく話す。
すると複雑そうに顔を歪める姿を見れば感情が高ぶりそうになる。
「まぁ、今回は勧誘だけが呼び出した理由ではないからね」
『動揺バレバレですね』
「口を塞いであげようか?」
『遠慮します』
そっと返すと、ため息混じりに、森さんが大ぶりの茶色い椅子に座り込んだ。
「しかし、君の過去を抹消したのは私だが、本当に探偵社には似合わない経歴だよ」
『あなたの経歴よりかは綺麗ですよ』
昔を思い出すように、宙を眺めている。
この顔はいっそ絵になるが描く気はない。
「闇社会で万屋をする者、ある時は殺しを、ある時は密売を、ある時は暗殺を。
報酬があれば必ず遂行する【闇の万屋】の二つ名を持つ、性別不明の支配者。
津島A_____________」
『……随分と昔のことを』
呆れたように言っているがきっとバレている。
ボクが今までにないほど恐怖していることが。
「君はこの名を好いていたが、今は単なる鎖でしかないのだろう?」
『分かっているならもう口にしないでもらいたいね』
「……その6人目の被害者は、ポートマフィアの新人にして、有益な才能を持った少年______太宰治」
ダザイ君。
ボクが、苦しめた者。
ボクが好いた者、ボクが、壊した者。
『元はと言えばあんたのせいでもあるだろ』
「しかし実行犯は君だ」
『それを命じたのはお前だ!!!』
そう、
このボク、別名【裏の万屋】に依頼をし、ダザイ君を苦しめるように命じたのは、
その親も同然である、マフィアの首領
________________森鴎外なのであった。
「もしも私がそれを命じ、依頼し、報酬を払ったとしても、実行犯は君であり私は単なる影だ」
そう話す言葉にも見つめる眼差しにも感情が見出せない。深く虚無である。
「そこで問うのだが
君は本当に太宰君と共にいるべきなのかい」
それはもはや疑問形ではない。
『ボクは、ボクは』
一緒にいたいと思う。
しかしそれがダザイ君にとって嫌なことであるならば、ボクは、
離れるべき、なのだろうか。
479人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
NamE.薆(プロフ) - 時雨零さん» わかります!太宰さんの心情を書く時は度々お世話になってるんです! (2017年6月3日 10時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
時雨零(プロフ) - とても楽しみにしています、この小説にとても痛い痛がりたいと言う曲が合ってるなーと思いました (2017年6月3日 7時) (レス) id: 7585b82a1c (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 夢さん» 外伝の方にたくさんお願いしますね (2017年6月1日 21時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - 続編ありがとうございます(泣) (2017年6月1日 21時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
夢 - わわ、続編出るんですか・・・!せっ、正座待機して待ってます・・・!リクエストはどれにしようか迷いすぎて決められない・・ッ (2017年6月1日 20時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年5月21日 17時