心得4つ目《意味のこと》 ページ5
河川敷を超えて、雑踏を踏み分けてビル街の隙間を抜けて本部へと向かう。
闇に入り込む感覚が確かに存在する。
珈琲にスプーンを差すように、水に体をつけるときのように、体に張り付く空気が変わり、急に別の空間に踏み込んでいく。
淀んだ空気が本部には漂っている。
表向きに活動を行なっているとは思えない淀んだ其の空気に、なぜ人々は気づかずに素通りし通い、会話し汚せるのだろう。
「永井幹部!それでは失礼します!!!
おい太宰、ちゃんと会議行けよ?行かなきゃ首領が困る」
「はいはーい」
適当な返事を中也にしてから、また進み出す。
永井は呑気に手まで振っている。
いつ死ぬかもわからないこの世界で手を振り合う行動は無意味だ。
『……先程から見ているに君は、余程自分を隠すのが下手らしいね』
「は……?」
思わずそう呟いてしまった。
失言だったがそれすらも永井は笑った。
まるでやっと本心を見せた、とでも言いたげに嬉しそうだ。
『これから幹部として共に仕事をするんだ。最低限、首領くらいには本心を残しておきなさい。
あの人はふとしたときの一言は本心だからね』
「存じております。ですが、首領の小言を一つ一つ聞いていても意味はないかと」
『意味がないことなんてないんだよ』
やけに真剣に顔で言った。
まるで別人のように変わった其の顔が途端に恐ろしく見えて、なのに目を離せなくなって、どうしようもなくなった。
『全てのことに意味はある。第三者にとっての意味ですらもそれは意味となる。何処かの誰かが願った状態かもしれない。
それにも意味がある。良くも悪くも』
「……………」
博識だと自負する私でも何を言っているのかよくわからなかった。意味がある。
何事にも意味があるのなら、なぜ人は生きるのだろう。その、意味は?
私の………
『まぁこんな話をしていても会議に遅れてしまうだけだね。行きましょうか』
質問しようとしていたのを知っていたはずなのに切り上げて勝手に先に進んでいく。
その背中に滲んだ血の幻覚を見る。
目をこすってからやはり思った。
「結局、自分勝手じゃないか」
少し、がっかりした。
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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時