心得33つ目《任務のこと》 ページ39
翌日、本部に戻る途中に呼び出され首領室に私はいた。嫌な予感が当たってしまったというような顔の幹部たちが呼び出されている。
紅葉幹部も珍しく怒りに顔を歪ませている。
「これで全員だね」
首領である森さんの声がやけに真剣に部屋に響く。目を開いてその光景を見つめる。明らかに感情を見せた森さんを私はその時初めて見た。
大方予想はつく。先日の異能持ちの少年のことなのだろう。この空気ではおそらく。
「先日、永井幹部がとらえた異能力所持の少年、夢野君が今朝逃亡していた。
すでに数名の被害者が出ている。街に向かった可能性が高く今、できる限りの人数を捜索に当たらせている。しかし相手は精神操作の異能。長くは持たない上にこちらの戦力が確実に削れていく」
そこで君達だ、と怖いくらいの声で言う。
私たちは黙してそれを聞く。これに意義も反論も許されない。全ては黙して聞き、それを実行するために命を費やすだけ。
森さんが私の目をじっと見た。恐怖にそっとそらすと、殺気にも似た気に、私の目線は自然の森さんの方を向いた。
「現場の指揮は紅葉君に任せる。
君達幹部を信用し、決して誰もかけずに帰ると信じるからこそ、この任務を君達に実行してもらう」
森さんが渡した資料に書いてある地図の部分、詳しい人数と作戦内容、夢野久作の情報、そして肝心の対処法。全て頭に一瞬で入り込んだ。
重い空気の中で、首領が任務内容を簡潔に告げる。
「夢野久作の捕獲、および封印。
この任務に生還した暁には、君達が望む報酬を用意することを約束しよう」
少し軽くなった空気で私はそっと息を吐く。
首領は窓の方をそっと向き、愉快だというようにかすかに口角を上げた。私は思う。
この男は狂人だと。
それでいながら自分の現状を理解し、寧ろ狂気を自分のものにしている。やはり食えないほど素敵な人だと私も思わず笑いそうになった。
「首領の命じるままに」
「首領の……命じるまま、に」
「首領の命じるままに!」
「首領の命じるがままに」
『首領の命じるままに…………』
幹部それぞれが述べる言葉の重み。
これを口にしたからには命に代えても任務を成功させなくてはならない。
今から戦場を考え、体が震えてきた。恐怖よりも喜びと興味に対して体が反応した。
「良い報告を期待しているよ」
首領が笑むと同時に、外で止まっている鳥が一斉に羽ばたいた。
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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時