心得30つ目《小泉のこと》 ページ36
2日経っても進展しない調査を発表した会議を終えて、私は死ぬのにふさわしい川を探していた。
横浜にある川はもう大方入ってしまったから少し遠出をする手も考えていた。
「……っ、そう、ですか…」
声が聞こえてふとその方を向くと、小泉幹部が何もないところで頭を下げていた。
否、何もないわけではない。うっすらと短い髪の少年が見える。透けた体に砕けた腕、首から流れる血は落ちる前に気化されて消える。
「何をしてるんですか」
暇だったというのもあって話しかけてみると、少年は嬉しそうに私を見て腕をパタパタさせた。だらしない腕が重力に従い重く垂れ下がっている。小泉幹部が驚愕したように肩を震わせると、私を見て安心したように一息ついた。
「川端、さん…かと、思った」
「まさか。私があんなやつと同じに見えます?」
「み、みえません……」
小泉幹部が本部の近くにある広場のベンチで話そうと珍しくいうので同行した。自動販売機でおしるこを買って飲んでみると暑くて喉が焼けるかと思った。小泉幹部は無難に緑茶を選んでいた。
「あ、あなた、も……みえるんです、よね」
「あーいうのですか?見えてますよ。
いつからかは記憶していませんが」
「初めて、です。本当に見えている、ひとは」
小泉幹部がか細く手を振るところには人間がいない。美しいほど憂いた瞳の女性が透けた足を見せながら子供の姿を目で追っているのがみえるだけだ。
おしるこはもう無くなってしまい、仕方なく烏龍茶を選択した。
「占い師、とか、神父は、みえた、り……するんです……けど」
「多分、私が死にたがりなのがあっちの世界にも伝わってるんでしょう。だから寄ってくる」
「嗚呼、それは、ある、かも」
薄く笑う小泉幹部が途端に怖い顔をして緑茶を落とした。私が顔を覗き込むと冷や汗を流して、耳を塞いでいる。ボソボソ何かを呟きながら目を虚ろに、または泳がせて震えている。
「小泉幹部…?」
「きこえ、ぁ、いや、です……わたし、ませ。
ご、ない、ぇ……くる、ぁ……捕まえ、ぇ、えええ」
明らかに様子のおかしい小泉幹部の腕を掴んで呼びかける。荒い呼吸に涙が溢れる瞳。
すると一点を見つめて呟いた。
「好きになって欲しかった」
そういうと力を失ったように倒れた。小泉幹部を部下を呼んで運ばせ、わたしは静かにその広場に佇んでいた。最後の一言がとても聞き覚えのある一言だったからだ。
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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時