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心得27つ目《人形のこと》 ページ32

不気味な童謡が聞こえてくる。
闇の中で揺れていたものが物理と音を立てて落ちた。それが床に散ると赤い模様を作り花が咲いたのを見るように子供はそれに合わせて笑った。




「つーるとかーめがすーべった……」




だんだん目が慣れてきた。
見えていたそれが死体であることも、子供が少年であることもわかった。
少年は後ろを向いていて黒と白の特徴的な髪が見える。



「うしろのしょーめん……」





ゆっくり後ろを振り返って、
星光る瞳を太宰に向けた。
柔らかい微笑みは歪な笑顔に見える。
ロープのやうな布切れは悪魔が揺らめくように見える。
持っていた人形が不気味にケタケタ笑いながら少年の手の中からこぼれ落ちた。





「だあれ?」





嬉しそうに笑いながら少年は太宰を捉えた。
目で追いながら、ゆっくり近づく。
光の下に出るとその体がよく見えた。
傷だらけの体に、ボロボロのワンピース、
黒と白の髪、星と円の瞳。
ゆっくりと笑みを描く口元からは不自然な血が溢れていた。





「あっははははっ!!!」




『太宰幹部、下がるんだ!!』





永井幹部が叫ぶと同時に太宰が警戒して下がった。永井の向ける銃口が少年を捉える。
光が怯えながら永井幹部の外套の裾を握っている。




『悪いね、少年』




少年の腹部を弾丸が通る。
永井幹部が放った銃弾が通ったのだと理解するのはたやすく、その後一声もあげずに少年は倒れた。




「殺したんですか」



『殺すつもりでやってるなら頭を狙ってるよ。生け捕りにします。太宰幹部は首領に連絡を。
光は私のそばを離れないで』




永井幹部の指示に従って、首領に連絡をかける。
永井幹部が少年を睨み、じっと何かを思っているその瞳を見つめながら電子機器を握りしめた。







ーーーーー
ーーー

ーー






『さて、君は一体何者なのでしょう』




意識のないその少年に声をかける。
光が首を傾げながら、少年の足元に転がっていた人形を掴んだ。掴むと急にケタケタ笑うそれに光は驚いたのかそれを手から離した。代わりに私が拾うとすると心配そうに光が私を見る。
頭を撫でる片手に擦り寄る光が心底愛おしく見えた。




「多分、この少年は異能力者です」




『何故そう思うんだい?』




「感覚です。同じ感覚がします。
きっとこの子も何かをなくしてそれを補うために力を手に入れたんだと思います」




光がやけに静かな瞳で少年を見ていた。

聖ヴァレンタイン話《今年のこと》→←心得26つ目《叫びのこと》



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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時

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