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心得26つ目《叫びのこと》 ページ31

やがて別れた私たちはそれぞれ仕事に向かっていた。永井幹部と光と私は新たな下級組織の下見に向かっていた。




『太宰幹部。幹部の心得その4だ』



「…………」





楽しそうな顔で私の方を向いて、
勝手に話し始める。さっきの怖い顔も怖い声も殺気もしまいこまれて、まるで知らない人がいるかのようだった。
しかしこれがこの人だ。謎の多いこの人だ。





『非があると思ったら謝ること』



「………非がないと思ったら謝らなくていいんですか」



永井幹部が目を丸くして頭を掻いた。
そうじゃないけど、と呟いて言葉を考えているようだ。進む道は砂利。歩きにくいというのに考え事をしながらまっすぐに歩いていく。



「うわっ」



『おっと、気をつけて。砂利道は転びやすい』




片手を出してエスコートする紳士。
その手を振り払って、先に進む。
少し悲しそうな永井幹部の顔がなぜか目にしみた。





「………」




『……うん。あの子ならきっと君の力になってくれるさ』






仲良さげに頭を撫でる姿がどこかの親子でありそうでそれでいながら紛い物で、なんとなく胸の内がしんみりしてきたのを隠すために、少し足を早めた。
光くんが砂利道のかろうじて整ってるであろう道を駆ける。笑みを時折幹部と交わして。
ゆっくりと後ろに流れていく景色を、昔は追いかけようとしていたっけか。
今は追いかけるなんてことをするだけ無駄だと現実を見てしまった。子供の純粋さを思い出して私は少し悲しくなった。





「うわぁぁぁぁぁっ!!!」




「!?」



急な叫び声に目を向けた。
小さく見えてくる姿は人間だ。黒いスーツの男で資料にあった下級組織の幹部に匹敵する人物だった。
そんな男が血涙を流しながらゆらりゆらりと穂のように動き、やがて倒れた。
銃を構えて近づくとその男の首に手形が付いていた。おぞましさが感じられる、紫色の手形だ。




「っふふふ、ひひ、あっははは」




「誰だ。そこから出ろ」




銃を暗闇に向けてじっと目を凝らす。
何かが揺れている。照明だろうか。
しかし明かりはない。
その中心で笑い声を発している人物がいた。




「……子供」




じっと子供を睨みながら、
近づくと後ろから肩を引かれた。
そっと振り向くと、永井幹部が険しい顔をして光と一緒に闇を睨んでいた。
ひどい集中力で何も話せなかった。





「かーごめ、かごめ」





子供がゆっくりと口を開いて、確かな言葉を発し始めた。

心得27つ目《人形のこと》→←心得25つ目《謝罪のこと》



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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時

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