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心得24つ目《口論のこと》 ページ29

「太宰さん。治療が終わりました」




「芥川くん。もういい。先に戻っていなさい」




芥川くんが医務室から帰って来て、てとてと走って来た。何だか光のような可愛らしさが見えずに、何となく突き放した。
少ししょんぼりしたような空気でその場を通りすぎようとした芥川くんの肩を誰かが掴んで引き止めた。





「おい、その言い方はねェだろ」




「その喋り方。嫌なのが来た」




すぐに言葉を返して芥川くんもろとも立ち去らせようとしたがその態度が逆に相手を煽ったらしい。
私に向かって来てまたピーピー喚いた。




「煩いよ中也。ほら、永井幹部も呆れてる」



「………チッ」




『私を出すのはやめてほしいですね。
呆れてはいませんよ。呆れては』




「呆れては、って!」





一気に騒がしくなった休憩所にため息をこぼすと芥川君が軽く外套の端を引いて来た。
弱々しい瞳を下に向けて、私の顔を見ない。




「何」



「……嫌なら僕が殺します」



「………君のために教えてあげるけど、あのチビは体術ゴリラで、永井幹部と光君は君なんかよりずっと強いし頭が回る。君なんか数秒で返り討ちにあって泣きながら土に帰るだろうよ」




「だからその言い方!芥川が可哀想だろうが!」





「可哀想?このマフィアの社会に可哀想ななんて言葉はないよ。そんなもの力がなかった奴をあざ笑う言葉と同じさ」




「ンなこと言ってんじゃねェ。言い方を変えろって話だ!もう少し言い方っつーもんがあるだろ!芥川はまだ子供だ、すこしくれェ」




「子供だから何?この社会にいるものは子供だからと言って守られるわけじゃない。自分のことは自分でできるようにしないと何もできないままなら死んでるのと同じだよ」




口論がいつものように加速していく。
芥川君はそれをまたかと見た。この子はこれを見るのが初めてではない。自分の話題なのも初めてではない。それがすぐに収まると知って、何度か咳をして終わるのを待っていた。
光はそれを初めて見て怯え慌てながら止めようと前に進み出た。しかし別の影が光よりも早く前に出た。



次に来たのは、近くの壁への衝撃音。
強い強い衝撃波は私たちの頬をかすめて、殺気として通り過ぎた。




『黙れ』




低い声だった。低すぎて怖かった。
知っている永井幹部がふと消えて目の前かな単なる男、否、私たちよりも格上の男がそこにいるだけのように見えてしまった。
私たちの口論はそこで途切れた。

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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時

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