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心得23つ目《珈琲のこと》 ページ28

訓練を終わらせて芥川くんを後ろにして医務室に来た。医務室では入れ違いに永井幹部と少年、光が出て行った。
芥川くんを医務室の担当に任せると、私も休憩しようと戻った。
自動販売機から缶珈琲を買って飲むと少しだけ安らぐ心。一週間でこんなにも人は変わるものなのだろうか。実際変わっているのだからそうなのだろうけど。




『お疲れ様』



隣で同じようにして珈琲を開ける音がした。
いつの間にか立っていた永井幹部が私をみて微笑んだ。隣には光も一緒だ。永井幹部の外套の端を掴みながら牛乳を飲んでいる。



「二人も訓練の後ですか?」



『まぁ、そんなところですよ。
この子にもいずれ仕事をさせたいからね』



愛おしそうに光の頭を撫でる永井幹部の姿は子供を持つ親のように見えて、それを口に出そうとしてやめた。この人の前でその手の話は無しだったのを思い出したからだ。
煩わしい気持ちを珈琲とともに飲み込んだ。



『……うん…話してくるかい?』



光が頷いてから私の足元に走ってくる。
子供は正直言って苦手だが押し返してしまうと保護者代理の目が痛い。
仕方なくしゃがみこんで目線を合わせた。



「 ……!?」



私の手を軽く掴んで口をパクパクと開閉する。
口の動きで読み取れるが、驚いた顔をして私を見上げた後永井幹部の方に小走りで戻って隠れてしまった。話せないとこの時知った。
何とも言えない気持ちになって、光をにらんだ。



『嗚呼、すまない、光。彼に言葉は聞こえないんだ。異能力を消しちゃう力があって、光の声を遮っちゃってるんだ』



「……?………!」




『太宰幹部、口元から言葉を読み取れるかい?』




「まぁ、多少なら」




光がまた私の足元によって、口を大げさに開閉する。言葉を伝えるためなのだろうが、私にはそんなことしなくてもわかる。




「よろしく、光。太宰と、言います?」




子供相手の対応がわからず思わず敬語になると二人から笑われた。
光が、微笑んでからまた話す。




「……………」




「敬語なんて丁寧ですね…?丁寧じゃない。言い方がわからなかっただけ」



「………?



「異能を消す異能は異能と呼べるか?…………異能ってことでいいんだよ。それ以外にこの力の証明方法はないからね」





『結構難しい話をするんだね。二人は』




ふてくされたような顔で永井幹部が私たちを見ていた。

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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時

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