検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:118,595 hit

心得11つ目《意思のこと》 ページ14

歩いて歩いて、子供達からすこしだけ情報を聞くことができた。
黒い外套を羽織った子供が強いことと変な獣を出して攻撃して来るから怖いということ。
きっとその子供は異能力者だ。
太宰幹部がどうにかしてくれるだろうが私がもしその子にあったら……少しだけ話がしたい。




『ねぇ、君』




「………?」




『この辺りで強い子は誰だい?人とは違うことができたり、すごい特技があったりする子はいるかな?』




「………」





子供は私を見上げて軽く頭を縦に振った。
知ってるのだろう。しかし言葉を発さないところを見るともしかしたら話せないのかもしれない。
持ち歩いていた杖でそっと文字を書く。




「……?」



『わからないか……』




意思疎通ができない。言葉は知っているようだが、話さない書けないではどうしようもない。
子供を見ると私の腰あたりまでの身長でこの辺りにいた子供達より少し年上だということがわかる。決して強靭そうでもなければ異能を持っている気配もない。長いボロ布を着た姿で性別もわからず、何がしたいかもわからない。
それなのにこの辺りの子供達はその子の周りに集まって大事そうに守っている。





「………、……?……」




何かを話しているように見えるが声が出ていない。しかし子供達は理解したのかはけていった。目の前で先ほどの年上の子供が私を見上げた。
ゆっくりと私に手を伸ばしてそっと膝に触れた。




「きこえ、ますか……」




『…これはこれは。意思疎通はできないと思っていたのですけど』




「むかし、こえを、なくして……口を動かして、言葉を覚えました。あなたは、僕をどうするつもりですか?」



その目がゆるく黒くなった。
敵意が消えた瞳だった。だが生きている瞳ではなかった。この先の言葉を悟っているようなそんな瞳で私は思わず息を飲んだ。
この子は、見た目でいうとまだ10かそのあたりであるというのに随分と物事を理解している。
これから自分がどこかに連れていかれるか、死ぬことを理解している。
しかもそれに恐怖していない。
恐怖という感情が、見つからない。





『君は、私が引き取ろう』




「……ひき、とる……?」




『私と共に暮らしてくれないかね?勿論、君が嫌だというならやめよう。ただ少しでも此処から抜け出したいと思うなら、手を取ってくれると嬉しい』





その子供は何の迷いもなく私の手を取った。そして、安心したように笑って、涙を流した。

心得12つ目《光のこと》→←心得10つ目《子供のこと》



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (196 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
343人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。