心得9つ目《可哀想のこと》 ページ12
「あの、あれには……触らないほうが、いい、ですよ。あなた………好かれてるから、気をつけてください……。たざい幹部」
「……あはは、肝に命じておきます」
太宰、なんだけどなぁ。
また笑うと私たちとは逆の方の道へと歩いて行った。名前を間違われた上に変なことを言われた。確かに昔からあの手の人たちは見えていた。高熱で倒れた時、大怪我をした時、死のうとした時、あらゆるところにいて私に手を伸ばしてくる存在。最初は怖かった。けれど彼らは私には触れられない。私が手を伸ばさない限り私の体をすり抜ける。無力なものだ。
『彼、狙撃手なんですけども一風変わった狙撃をするんです』
「と、言いますと?」
『セットしたらその場から離れるらしいんです。なんでもターゲットが来たら教えてくれる人がいるらしくてですね。そんな人私は見たことがありませんが、貴方はもしや、見えているのですか?』
遠くに見える小泉幹部の背中には小さな女の子がいる。これまた薄い今にも消えてしまいそうな子だ。似たような銀髪を揺らして小泉幹部に笑いかけている。いつまでもついていく。
おそらくは妹だ。きっともう生きてはいない。妹がターゲットを教えてくれているのだろう。
二人の笑顔を見てなんだか苦しくなった。
これは、情だろうか。
否、哀れだと思ったのだ。私は今あの二人を哀れで可哀想だと思ってしまったのだ。
決してそう思って欲しいがためにそうしているわけでは無いというのに。
『太宰幹部?』
「………なんでしょう?」
『あまりよそ見をしていると落ちてしまいますよ。さ、もう少しでつきます』
手を貸して歩きにくい場所を自ら進んで歩く。エスコートにしては相手が違う。子供相手だと思っているなら腹立たしいことだが、彼はきっとそんなこと微塵も考えてはいないのだろう。善意。
そんなもので動いている人間であるように感じてならない。マフィアにいるのが何かの間違いであるようにしか思えない。
この人はきっと人を殺さない人だ。
躊躇い助けてしまう人だ。きっと、そうだ。
『さぁ、スラムですが……意外にひどいですね』
道にごろごろと人が転がっている。
息絶えているものもいれば虫の息のものもいる。子供が数人固まっているのもいれば、大人が一人で歩いているのもある。
其処はまるで異国だった。ここが横浜の一部であることに私は疑問を覚えてしまった。
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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時