心得1つ目《幹部のこと》 ページ2
街中を歩けば、死が巡っているような気がする。
それに溶け込めたらと願うばかりだのに、願いは強いほどすり抜けていく。
今日付けで幹部に昇格した私に待っていたのは、五代幹部会だ。
特に目指していたわけでもないのにもらった其の称号は、賞状が紙片であるように私には特に意味もなく、どうでもいいことだった。
河川敷は昼の活気が少しだけ漂い、煩く愉快な本所よりも落ち着ける。川が近いと飛び込むのも容易い。今日は肌寒いから川に入るのは辛そうだ。だが、其の極寒に凍えて身も心も凍って仕舞えばそれもそれでいいかもしれない。
「………近くに蛞蝓がいる予感がする」
なんとなく嫌な予感がして河川敷から離れた。案の定、私がいなくなった後に私を探しに着た蛞蝓が少し怒り気味で地団駄を踏んだ。
其の姿が滑稽だったからちゃんと写真を撮っておいた。後で幹部会で披露してやろう。
と、思っているとちょうど近くの廃墟が目についた。ひっそりと建っているそこは、猫が何匹かいるくらいで人の気配はない。しかも元は民家だったようで天井もしっかりしている。
昔使われていたであろう椅子や捨ててあった縄などを使えば、簡単に死ねる。
天井に括り付けて、輪にして、それを首にかける。台を足で蹴り倒せば簡単に………
『何をしているのかね?』
気配が感じ取れなかった。
其の声は私のすぐ耳元でして驚いて其の表紙に台を蹴ってしまった。
縄が絡まっていく。しかしそれもすぐに途切れ少し宙に体が浮いた。重力によって落ちた体が床に叩きつけられる。背中から落ちたせいかヒリヒリする。背中をさすりながら隣にいて縄を切ったやつを見上げた。
『幹部会に遅れると首領が煩い。早く戻りましょう。たてますかな?』
手を差し伸べてくる姿は、優しい父のように温かい雰囲気をまとっていた。
青いネクタイがスーツに合わず、革靴は磨かれているのがわかる。少し長い髪は後ろで流されていてそれを黒い帽子で押さえている。
優しい其の瞳には確かに琥珀色にも似た黄の色が見えた。
何度か見たことのある顔だった。
其の身なりも変わらずだった。
何度か仕事で手を貸したことがある人で、その人はポートマフィアではこう呼ばれていた。
「最年長幹部、永井A」
名を呼ばれたからか、私がじっと睨んだからか、男は其の瞳を黒く濁らせて薄く微笑んだ。
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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時