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34、ぬくもり ページ35

〔視点=福使〕




病院を抜け出して駆け出す。
道に路地に知らない場所に。しかしそうしてたどり着いたのは、夕刻の雄英高校だった。



近くに見えるのは緑谷くんと麗日さんと飯田さん。三人が並んで楽しそうに歩いている。
みんな、笑ってる。






あれ、なんで。






『っ、ひっく』




なんで、涙が出てくるんだろう。


そうか。
三人が仲良く歩いて笑ってるのを羨ましいと思ってるんだ。
そこに自分が入れないと言うのを知ってるからか、羨ましくて泣けてくる。




(離れなきゃ)



泣いてるところ、見られたくないのもあるけどそれで笑われるのがもっと嫌で、背を向けた。





「福使さん?」




後ろからかけられた声。
私に被さるようにして伸びる影と見えなくなった街灯。
後ろを不意に振り向くと、緑谷くんが、私に手を差し伸べていた。





「大丈夫?」






優しい声。麗日さんと飯田さんも心配そうに私を見て支えてくれる。
優しい、優しすぎる。





《大丈夫?》




ふと、お母さんの顔が浮かんでそっと下を向いた。涙がこぼれそうになって強く目を瞑る。
麗日さんが桃色のハンカチで私の目元を覆う。




「目、腫れちゃうよ」



「温かいタオルで目元を覆うといい!よかったら学校の方で手当てをしてもらうか?」



「立てる?無理には聞かないけど、悩んでることがあったら言ってね」




かけられる温かい言葉。
私にも差し伸べられる手のひらを掴んで立ち上がる。



『っ、ひぅっ、みどりや、くんっ……』




涙がおさまらない。こぼれて溢れて止まらない。あの日から泣かないと決めていたのに体は感情に感化されて正直に働く。



緑谷くんに倒れこむようにして肩に顔を埋める。慌てるようにして支えてくれる緑谷くんのあったかさが身にしみて、また涙がこぼれた。




「ふ、福使、さん……」


緑谷くんが慌てながら背中をさすってくれる。
涙が止まらないのを口をハクハクさせることでしか伝えられない。
それでもみんなはわかってくれて、支えてくれて、近くのベンチに座って私が泣き止むまでそばにいてくれた。




『ごめん、みんな。帰る途中だったのに』



「いいよいいよ。親には遅くなるって言ってあるし」



「私も問題ないよ!」



「俺はもう30分ほどならいれる」




みんながそばにいてくれる。
そう思えてくると涙は自然と止まっていた。




『みんな、ありがとう』





感謝するとみんなが顔を見合わせて笑った。

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年11月25日 21時

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