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32、後悔 ページ33

皆がバスに乗り込んでいく中、警官に紛れて建築物を見つめている棘ついた髪の青年がいた。爆発を起こす右手が震えている。
その眼下に映る先ほどの光景に今でも震えと苛立ちがおさまらない。




「チッ」



舌打ちをしてもなおらないそれにぶつけようのない睨みを壊れゆく残骸に向ける。
後ろから聞こえる硬化する個性を持つ彼の声ですら鬱陶しく感じてしまう。
怒りを向けるべき相手は彼ではなく自分だというのにその器用さが自分にかけていることもまたわかっていて苛つく。



「爆豪、教室へ行けってよ!」



「わかってるよクソが」



苛立ちを抑えようとするも、それがかなわない。精神的な成長が見込めない。
幼いながらに育ってしまった自尊心がこうして今自分をしめていることに、気づいているのかいないのか。




握られた拳は固く、その場を後にする背中は後悔を残していた。




ーーーー


ーー





バスをそれて脇道に入り走り出す少女。
人混みに紛れてタクシーに乗り込みそっと金を置いて出ていく。病院前。
この辺りで一番大きく、一番有名で頼りになる医師が多いところだ。



『あの』



病院内ではお静かに、と書かれたチラシは年中外されていない。老若男女が集い生と死の境であるこの場所を少女はあまり好んではいなかった。
そこは愛しい人が死んだ場所であり、憎き人が生まれた場所だからである。



『相澤……相澤消太さんの病室は、何処…ですか?』




221号室を言い渡されてエレベーターで登る。
誰もいないエレベーターのガラスに映る曇り顔の少女。涙を拭ったあとが目立つ。
ぼーっとひたすらに登っていくエレベーターに乗られ揺られ、その病室がある階にたどり着いた。




221号室。
札には、相澤消太の文字。
ただ一人の個室。扉の奥から誰かの話し声が聞こえている。


『失礼します』



少女が扉を開けるとまだ目を覚まさない相澤が適度に呼吸をしていた。それを一人、椅子に座って寂しげに見つめる男がいた。派手な衣装を取り外して、単なる一の友人としてそこにいる。
プレゼントマイク。
彼が一番、相澤を心配していた。



「……Aちゃん、だね」



いつもと口調の違う彼から滲み出ている雰囲気は暗く重い。沈んでいるのは珍しい。もともと元気はつらつが似合う男だったからか、沈み悲しげな顔をするのは珍しいのだった。





『久しぶりです』




少女が空のように微笑んだ。

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年11月25日 21時

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