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31、無事 ページ32

福使の長文の嘘は案外周りに納得されたようで、へぇー、そうか、なんていう声が聞こえてきていた。
ほっと、安堵する福使に背を向けて何人かがこそりと話した。




切(絶対あれが素だよな)


上(隠そうとしてんのかよ、可愛い)


口(本人の前で言ったら怒られちゃうだろうけど)


常(まぁ、悪くはないな)


蛙(これはあの言い訳で理解したように見せていた方がいいわね、ケロケロっ)



何人かの内緒の嘘は、優しく暖かかった。
福使は後ろで首を傾げむすぅと顔を歪めていた。




轟(不細工だな)



轟はそう思いながらクスリと笑った。




「取り敢えず生徒らは教室に戻ってもらおう。すぐに事情聴取というわけにもいかんだろう」



蛙吹が警官に近づいて、心配そうにケロケロと鳴いた。



「刑事さん、相澤先生は」



福使もその質問に反応した。自分の家族も同然の人の安否はもちろん気になるのだ。
警官は少し落ち込んだように顔を伏せた。
片手に端末を握るとそこから声が聞こえてきた。近くの病院の偉い院長の声であると何人かは察した。



「両腕粉砕骨折、顔面骨折。幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ、眼窩底骨が粉々になってまして……目に、何かしらの後遺症が残る可能性もあります」



皆、どんな顔をしていいかわからなかった。
命はあるものの複雑骨折。個性を使うのも恐らく後遺症やら傷の影響やらで大変になるだろう。
タイムラグの発生によりヒーロー引退の説も悪ければあるのだ。
命あり幸い、とはあまり言えなかった。




「13号先生は!?」



芦戸が心配に声を荒げた。
彼女は13号を特に心配そうに見ており、ずっと付きっ切りであった。
だから尚更早く知りたいのだろう。



「治療は終わってる。背中から上腕にかけての損傷がひどいが命に別状なし」



安堵の声が漏れ聞こえる。
幾らか柔らかくなった1−Aの雰囲気にさらなる朗報だった。



「オールマイトも同じく命に別状なし。リカバリーガールの治療で十分処置可能とのこと」


「緑谷くんは!?」



麗日と飯田が焦ったように聞く。
警官は柔らかく微笑んで帽子を押さえた。



「彼も保健室の治療で間に合うそうだ」



その言葉にクラスの全員がどっと疲れたように息をついた。

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年11月25日 21時

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