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30、違和感 ページ31

「両脚重傷の彼を除いてほぼ全員無事か」




人数を数える人型の警察官が安心したように微笑む。事件があって数時間。軽傷者の傷の手当てが終わり、重傷者は病院に搬送された。
皆々親や親戚への連絡を済ませその日は早帰宅ということになった。



「尾白くん。今度は燃えてたんだってね」



葉隠が尾白に声をかけた。
尾白だけは誰かと組んで飛ばされたのではなく一人で飛ばされていた。
周りも一人だと思ってた、とこぼすと疲れたように笑う。



「葉隠さんはどこにいたんだ?」



「土砂のとこ!」



土砂にいたのは葉隠と轟だ。
轟きがほぼヴィランを一掃し、情報を持った上で一人でオールマイトの救出に向かった。




「轟くんクソ強くてびっくりしちゃった!」



無事でよかったね、と声をかける尾白を横目に轟が目をそらした。



(凍らすとこだった。危ねぇ)




気づいていなかった。



「僕がいたところはね、どこだったと思う?」



青山の問いを無視して皆は話す。
蛙吹が、どこ、と仕方なさそうに聞くと、秘密さ、なんて返した。



『青山くんは火災のところにいたね。火に怯えて逃げてたけど』



「えぇ!?なんでバレて」



「お、福使!」



福使にむけて切島が声をかける。
切島の周りにいた数名も福使の方を向いた、




「あの時はありがとな!!俺の効果は全身じゃあまだ扱えねぇから、足から落ちても折れると思ってた。お前がいなかったら足手まといになってたぜ!!感謝してる!!」



照れ笑いでいう切島に福使が微笑んで、こちらこそ、と返した。
周りの全員が、その姿に一瞬違和感を覚えた。




「……福使ちゃんってこんな雰囲気だったかしら?」



「もっとトゲトゲしてなかったか?」




蛙吹と上鳴が疑問を声に出すと福使は慌ててクールに取り繕った。
元はと言えば人見知りだから周りに冷たく感じられていただけであって本人はもともとこのような性格ではない。しかし急激な雰囲気と口調の変化に違和感を覚えるのも当然であった。



『あ、ぅ………ごほんっ、私の個性のせいだ』



苦し紛れの嘘だった。




『私の個性は他人の個性を合わせるもので一時的に自分の体に別の個性を纏わせるものでもある。だから他人の個性を借りるとそのものの性格や口調がうつってしまうこともある。
今のはそれだ。あんななよった話し方をするわけないだろう!』




苦し紛れの長文の嘘は、
意外にも周りに納得させたようであった。

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年11月25日 21時

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