27、把握 ページ28
ヴィランの攻撃によって散り散りになった1-Aのクラスメイトは各々が個性や作戦を生かしてほぼ無傷の状態でその場を乗り切っていた。
全員に恐怖がじわじわ侵食されて行く。
このままでいいのか、本当に終わるのか、助かるのか、そんな思いをひっそり抱えたまま戦うのは齢15、16の少年少女たちの精神力では困難であった。
『………全員の位置把握、完了』
しかし、一人だけは冷静だった。
焦り、惑い、揺らぎ、混乱し、そんな中で仲間と支え合っているクラスメイトの姿を見て懐かしそうに目を細める姿。
福使Aは、倒壊したビルの屋上から全員の位置を把握した。
このゾーンは大方ヴィランの個性を奪って乗り切った。他に飛ばされた人の行方が心配だったのもあるが、彼女は他の目的もあった。
『相澤先生……』
相澤の姿が見えないのだ。
包帯にゴーグル、目立つ姿のはずなのに一向に見当たらない。
「おい、ここにはもうヴィランはいねぇ」
爆豪の声が聞こえた福使はその方向を見ずに、じっと相澤を探した。
外された爆豪のコスチュームの片側。
福使がそれを外して自分の横にそっと置いた。
『使わなかった。でも、貸してくれてありがとう』
「………」
爆豪は何も言わずに福使の見てる方向を見つめた。その方向にはあのワープ系統の個性を持ったヴィランと水色の髪の青年が見覚えのある米国気質な画風の男に向かっていた。
「ありゃあ、オールマイトか?」
「さっきの爆発はそれか」
オールマイトが脳みそが見えている奇妙の生物に立ち向かっている。
少し押され気味のそれを見て福使が顔を歪めた。
『応戦』
「するに決まってんだろ!!!!」
爆豪がビルから飛び降りた。
着地する瞬間に地面に向かって爆撃を放ち衝撃を殺す。同じように福使も飛んだが、切島がうわぁと呟いたのを見て仕方なさげに手を引いた。
『捕まっててください』
切島は、俺は男で…、などというのを無視して強く手を引き飛び降りた。
切島の半ば男らしい悲鳴と爆発音。
着地する前に二度の爆撃を起こし確実に衝撃を殺してから切島を下ろした。
『怪我はないですか』
「………大丈夫だ、ありがとな!!」
切島が笑うと爆豪を追ってオールマイトの方へと駆け出す。それとは真逆の方向に向かう福使の瞳には先ほどの冷静さは少しも残っていなかった。
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年11月25日 21時