七人目「ふん、僕に菓子を寄越せ」 ページ8
墓場。
一つの石碑の前で百合の花を手向ける男を見たことがあった。
その人と同じところで、赤い彼岸花の映える黒の着物を身にまとった、物憂げな男の人がいた。
『芥川さん』
「………なんだ貴様か」
私を貴様と呼びながらちらりと見てくる。彼岸花の黒着を着こなし、なびく黒髪から尖った物体が飛び出していた。
それは金色の角。何処と無く汚れているそれは芥川さんの意思が表されているのだろうか。
『えっと、何の仮装なんですか?』
「そんなことも分からぬか、愚者め。
僕は鬼神。闇に徒花を咲かす、黒衣の禍者」
鬼神。
和風な仮装は初めてみた。
『そうでしたか。すごく似合ってます!』
「ふん、貴様なぞに言われた所で意味もない」
ここで忘れていたことを思い出した。
カゴをあさると芥川さんにぴったりの菓子があった。
『御菓子が欲しいなら合言葉をどうぞ』
「貴様に言われずとも承知している」
芥川さんが私に近づく。
一歩で目の前にくる距離に立つと、無表情で手を差し出した。
「トリックオアトリート。
僕に菓子を与えろ。さもなくば八つ裂きにしてくれよう」
『だから違うっての』
しかし早く渡さないと本当に八つ裂きにされそうでそろそろと菓子を渡した。
「饅頭」
『和風なものがいいかと思いまして』
「…………くだらぬ」
そう言いつつも饅頭を懐にしまう。
やっぱり素直じゃない。
『やっぱり可愛いなぁ』
芥川さんが踵を返そうとして止まった。
そして勢いよく私の方を振り返って手を強く握った。
『……っ、え』
「僕は可愛くなどない」
掴んだ腕を自分の口元に押しやって
思いっきり噛み付いた。
『痛っ!』
血が流れたのを見ると芥川さんは笑った。
「僕にそのようなことは言うな。
今度は噛むだけでは済まさぬぞ」
口を離して、ニヤリと笑う。
その笑みの妖艶なこと。
思わず顔を赤く染めてしまい、さっと隠した。
「僕は負けぬ」
着物を翻して芥川さんが、ふと呟いた。
思わずそっちの方を見つめてしまう。
「誰にだって、何にだって負けぬ。
貴様にだって、もちろん負けぬぞ」
それだけ行って芥川さんがそっと振り向いた。
「A」
そのままどこかへ去ってしまった芥川さんの影を見て、私も歩き始めた。
次は、重力と踊る狼男。
八人目「あ?ンだよこの耳。誰の異能だァ?」→←六人目「お菓子、ちょうだい」
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赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - NamE.薆さん» マジっすか!全裸待機しときます。 (2017年12月29日 22時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» 新双黒の方も近々出します!! (2017年12月29日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 太宰さんが!!ヤバス!! (2017年12月29日 20時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 最後は綺麗なピタゴラスイッチ← (2017年12月25日 15時) (レス) id: 5a56e3c42b (このIDを非表示/違反報告)
やぬっちゃん(プロフ) - ありがとうございます!大満足です!敦君可愛い!やり直し前も好きです! (2017年12月17日 23時) (レス) id: b3f470051e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月20日 23時