二人目「君の魂を、ちょうだい?………なぁんてね」 ページ3
建物の一階の扉の先。
昼間はカフェとして運営されているその店には今は黒布をまとった怪しげな人影と私のみ。
「やぁ、いらっしゃい。A」
微笑んで手を軽く振ってくる。
黒布からのぞいた肌の包帯で、私はその正体を知った。
『太宰さんでしたか』
「っふふ、気づかなかった?」
年に似合わない楽しげな笑みを浮かべて、私に手招きをする。
そっと隣に座って、太宰さんを見た。
「さぁて、なんの仮装でしょうか」
黒布に机の下の椅子に立てかけてある鎌。
『死神さんですかね?』
「せいかーい」
グッと顔を近づけて、鎌をすっとかざしてくる。照明に反射して鈍く光る鎌に触れてそれが偽物であることをちゃんと確かめた。
「本物だったら危ないよ」
『本物なんて持ってくるはずありませんもん』
「なんでそう言い切れるの?」
『信じてますから』
そう言うとなんだか顔を赤くして、太宰さんは黒布を深くかぶってしまった。
『太宰さん?』
「トリックオアトリート。
お菓子をくれなきゃ、イタズラするよ?」
黒布のばさりととって、私の頬に手を添えながら、囁くように告げた。
少しの間唖然として、ハッと我に帰ると太宰さんが満足そうに笑っていた。
「っふふ、変な顔」
頬をつねる手が首に伸びた。
鎌を握って私の首筋に当てる。
その瞳は悲しそうで、どこか子供のような寂しさがあった。
「ねぇ、私に魂を頂戴。
私もすぐに行くから。約束するよ、きっとね。
お願い。ひとりにしないで」
泣きそうになる太宰さんを見ていられなくて私の方が太宰さんの顔をあげさせて、頬をつねってやった。
「痛いなぁ、っふふ」
『やっぱり、笑ってた方が素敵です』
太宰さんの近くにある机に、マフィンを二個置いた。太宰さんの好きな、蟹を混ぜた特別なマフィン。
「ちゅっ」
ふと額に柔らかいものが触れた。
太宰さんがイタズラ顔で笑う。
「次の人はね、探偵社にいるよ。
……もしよかったら、本当に考えてみてくれ給え」
私と一緒に死ぬことを。
太宰さんが目で告げて来た。
私はそれをちゃんと受け止めて、探偵社への階段を登った。
次は、理想を吸う吸血鬼さん。
三人目「吸血鬼になるのに何故髪を上げる必要がある」→←一人目「ユーレイだぞ〜、なんちゃって」
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赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - NamE.薆さん» マジっすか!全裸待機しときます。 (2017年12月29日 22時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» 新双黒の方も近々出します!! (2017年12月29日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 太宰さんが!!ヤバス!! (2017年12月29日 20時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 最後は綺麗なピタゴラスイッチ← (2017年12月25日 15時) (レス) id: 5a56e3c42b (このIDを非表示/違反報告)
やぬっちゃん(プロフ) - ありがとうございます!大満足です!敦君可愛い!やり直し前も好きです! (2017年12月17日 23時) (レス) id: b3f470051e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月20日 23時