第伍話 似る顔が二つ ページ7
「で、其奴は誰なんですか。あまり怪しい人を呼ぶのはやめていただきたい」
国木田さんが、私の後ろに立っているオサムを睨む。彼はものすごくビビリだ。多分。
常に人ならざるモノがいる状況にいる、または、昔何かしらの事があって其れらから傷を負った場合は、私の後ろにいるオサム達が見えたりする。
『あー、えっと、オサム』
「出て、いいの?」
『もう仕方ないよ。こっちで演るから、合わせて』
オサムが常人にも見えるように姿を濃くすると、国木田さんの隣にいた、えっと、敦……君かな。
敦君が驚愕したようにオサムに指をさした。
『まさか、透明化の異能が見抜かれてるなんて』
「透明化の、異能?」
国木田さんが呟いた。もちろん嘘だ。
透明化の異能、というよりかは、人ならざるモノの本来の状態だ。
『この人は私の部下のオサム。透明化の異能をもってるから珍しくてね』
「まさか、見破られていらっしゃるとは、私もまだまだですね」
「そう、か………なんだ」
国木田さんが落ち着いたように、息をついた。
きっと、見えているからこそ何かしらの苦痛を味わってきたのだろう。
オサムを見る目が少し、恐怖の目になっていた。
「あ、国木田さんっ!太宰さんが起きましたよ」
私もついでにその、太宰、という男を見に行った。
医務室。
白い壁と天井に薬棚が数個立ち並び、無駄に明るい照明が目を焼くように光っている。
其処の簡易ベッドに寝かされていたであろう男が軽く頭を振っていた。
「えっと、あれ……私、何で医務室に?」
「太宰さんっ!もう変な物は食べないようにってあれほど言ったのに」
「敦くん……………てへっ」
「てへっ、ではなぁぁぁい!!!」
国木田さんの怒号が響く。
その間、私は太宰という男を見ていたが、特に憑かれる体質のようにも見えない。
まぐれだったのだろう。
しかし、やはり似ている。
『やっぱり、オサムに似てるわ』
「えぇ〜、こんなのが?私の方がもっと凛々しくて麗しい顔をしてるよ」
オサムが文句を垂れるので、適当に
『はいはい、オサムの方がかっこいい』なんて棒読みで言ってやった。
「おや、そちらの麗しいお方は」
太宰さんが私を見た。
猛烈な嫌な予感を顔に出さないようにしながら、作り笑いを浮かべた。
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年8月22日 21時