第肆話 ビビリメガネ ページ6
四階、武装探偵社。
其処にあいさつしにいった、はずだ。
(挨拶しに行っただけのはずなのに)
部屋に入って最初に目に付いたのは、黒い黒いモノ。其れはとある男の首先に絡みついており、首の辺りを軽くガジガジ噛んでいる。
『また、妖怪』
行く所の先々にいるような気がしてならない。
ちょうどその男が近づいてきたためそのまま受け止める。
首筋についたモノが私の気配に気づいて此方を向いた。悲鳴と共に、モノが、私と目を合わせた。
合わせてしまった。
『此奴から離れなきゃ______食うぞ』
低い、ドスの効いた声を心がけて出してみると、意外にうまく行った。
モノはそろそろと足早に出て行った。
そして、拳を入れたふりをして、気を失った男を支えた。
にしても、この男
『似てる』
私と先程までいたやつにそっくりだった。
まるで瓜二つだ。
でも、彼奴より面倒臭そうだなぁ。
「ご協力、感謝します。宜しかったら茶を出しますが」
『あ、お願いしてもいいですか?私もあなたがたに用がありまして』
挨拶がてらに持ってきた菓子と、割引券をそれぞれ渡した。
「バー、桃源郷?」
『はい。私、其処のオーナーをしております、京極、と申します』
「中島、敦です!」
「探偵社員、国木田独歩と申します。
所で、一つお伺いしても?」
私にお応えできることならば、と言うと
国木田と名乗った男が私を睨んだ。
「その、貴女の後ろにいるのは、何者ですか」
『後ろ?』
振り向くと、「ばあ!」と言う声がした。少し驚愕して後ずさる。
声の主はもう分かっているのだけど改めて姿を見た。
? 私には姿が見える。此奴はさっきのモノと同じように、人ならざるモノだ。
なら、なぜ国木田さんに、見えた?
『………オサム!?』
「うえっ!?なになに?」
オサム________私のBARで休眠していたはずの桃好き男________を引きずって、角に寄せた。
小声で話しをしながら、軽く拳骨を与える。
「いったぁー!」
『なんであの男に見えてるの!?』
「見えてる………嗚呼、彼か」
オサムが納得したように頭を振った。
え、どゆこと。
「彼はね、私達の事が見える体質なのさ。
まぁ、多分、彼、すんごくビビリだね」
『嗚呼、そう言う事』
私も納得した。
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年8月22日 21時