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「じゃあ、そろそろ診察に入ろうか。
リラックスしてていいからね。」
山下先生はガッチガチになってしまっている私に、優しく声をかけてくれている。
これだけしてもらったんだから、がんばらないと……
山下先生が胸に聴診器をあてる。
若い男の先生に聴診されるって、なんか恥ずかしい。
「そうそう。上手にできてるよー。
ちょっと深呼吸してみよっか。
すってー、はいてー」
山下先生が真剣な顔をしながら、聴診していく。
「はい、おしまい。よくできました。」
山下先生に頭を撫でられる。
なんか恥ずかしい。子供みたいで。
「A、ごめんな。遅くなった。
山下に見てもらってたのか。お前が他の先生に診てもらって泣かないって、珍しいな。」
話を聞きつけてやってきた松岡先生が目を丸くしている。
「松岡先生、もう子供じゃないんだよ」
「俺にとっちゃ、まだまだ子供だよ笑
A、どうだった？」
「ちょっと脈が速いかなって感じですけど。
他は大丈夫そうです。喘息を持っているわりには胸の音もきれいですし。」
「そうか。脈はたぶん緊張からくるものだから、大丈夫だろ。」
「家に帰れる？」
「本当は入院して体を休めてもらいたいところだけど、そうもいかないんだろ？」
「うん。家のことしないとダメだし。」
「なら、今日は帰っていいぞ。点滴もちょうど終わるところだし。
ただし、絶対無理はしないことと、時間があるときに受診すること。約束な。」
「はーい」
「山下先生、針抜いてやって。
俺はちょっと病棟の方に用事があるから。」
針抜くの、苦手なんだよな。
刺すときほどじゃないけど
やりたくない……
そんな私の思いとは反対に、山下先生はどんどん準備を進めていく。
「ちょっとチクッとするよー」
怖いから目をつぶってたえる。
「はい、おしまい。お疲れ様。怖かった？」
「大丈夫です」
なんにでも大丈夫と言ってしまうのは、私の悪い癖だ。
「強がらなくていいのに。」
これが、山下先生との出会い。
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作者名：ぽん | 作成日時：2017年5月22日 16時
