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「あの、落ち着いてください。」
「すみません!えーっと……」
どうしよう?
いまので言おうと思っていたこと全部どっかにいっちゃった!
「こんばんは。慶一郎です。5年生です。」
慶ちゃん、ありがとう!
「貴久です。いま3年生です!」
本当によくできた弟たちだ…
「ほら、シゲもあいさつしよ?」
慶ちゃんは、自分の後ろに隠れていたシゲにも挨拶をするように促した。
「成亮です。一年生です。」
「よくできました。」
そんな風にシゲの頭を撫でる慶ちゃんは、私なんかよりもずっとお兄ちゃんに見えて、こんなときになんだけど、成長を感じた。
そして、そんな弟たちのおかげで私も落ち着きを取り戻すことができた。
「橘Aです。山下先生にはいつもお世話になっています。
すみません。いきなり押し掛けて泊めていただいて。」
「いえいえ、こちらこそお世話になっています。
智久から事情は聞きました。お体の方は大丈夫ですか?」
「はい。もうすっかり。」
「大丈夫だよ、父さん。
あとで俺がちゃんと診るから。」
「あ、それは結構です。」
「だーめ。ちゃんと診るからね?」
こうなったときの山下先生はテコでも動かないから、しょうがなく提案を呑むことにした。
「母さんは?」
「買い物に行くっていってたよ。
今日は人がいっぱいいるからって張り切ってたな。」
「母さんらしいな……
とりあえず、みんな座らない?」
あ、そういえばみんな立ちっぱなしだった。
「そうだな。」
「………」
……気まずい
机を囲んだとはいえ、気まずすぎる…
話すことないし!
なに話したらいいか分かんないし!
だいたい向こうからしたら、急に息子の彼女とその弟が泊まりにきたってことでしょ?!
沙耶さん!早く帰ってきてください!
「…とりあえず、父さんもババ抜きに混ざる?」
この状況をみかねてか、山下先生がそんな提案をした。
でも、初対面の息子の彼女たちとババ抜きなんてするか?普通。
「…そうだな。」
するんだ……
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作者名:ぽん | 作成日時:2017年5月22日 16時