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「ありがとな。二人にしてくれて。」
「別に。コンビニで振り込まないといけないお金があっただけ。」
「別にってお前は沢○か？笑 A様か？笑
もっと素直になればモテるのに。」
「うっさい。
そんなことより、ちゃんとお別れできた？」
「ああ。もうキツい治療に入るからってな。
本当はお前にもそうできたらいいんだけどな。ごめん。」
「謝らないでよ。」
入院中のお父さん世話をしなければいけない私は、最期までお父さんをみているしかない。
どんな状態になっていたって
「まだみんなのことを覚えているうちに、これだけは言わせてくれ。
俺は、家族みんなと出会えて、一緒にいれて、心の底から幸せだった。」
そんなこと、言わないでよ……
そんなの言われたら、涙が止まらなくなっちゃう……
こぼれ落ちていく涙が、車イスにのるお父さんの頭にポタポタと落ちていく。
「A。しゃがめ。」
ふいに車イスごと振り向いたかと思うと、そんなことを言ってくる。
泣き顔をみせたくない私はとっさにお父さんに背を向ける。
「いいから、はやく。こっちむいてしゃがめよ。」
仕方なくお父さんの方を向き直りしゃがむと、頭の上に、暖かい手が降ってきた。
「ありがとな。本当にありがとうな。
俺は、すごく幸せだ。みんなとこんな風に楽しい時間をすごせて、俺にはもったいないほどよくできた嫁と、娘と、息子がいて。
きっと、世界一の幸せもんだ！
思い残すことなんてなんにもない。
だから、そんな顔をするなよ。」
人はよく、父の背中から学ぶという。
きっとこれが、父の背中から学ぶ、大切なことなんだろう。
この日のお父さんは、とてもカッコよかった。
お父さんはその後しばらくして、私のことすらわからなくなり、やがて息を引き取った。
お母さんと弟たちには、治療を頑張ったけど、ダメだったみたいだと伝えた。
これでいい。写真の中のお父さんは、楽しそうに微笑んでいる。
みんなの記憶に残るのは、楽しそうなお父さんだけでいい。
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「考えごと、おわった？」
「ファっ！」
山下先生に声をかけられ、思い出から引き戻される。
「ファって驚きすぎでしょ笑
点滴終わったから、帰ってもいいって。」
「すみません。」
「明日も休みだし、今日は家に泊まりなよ。
家に帰っても、ゆっくり休めないでしょ？」
確かに、それもそうだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
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作者名：ぽん | 作成日時：2017年5月22日 16時
