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言うべきか、言わないべきか……
トントントントントントントントントントントントン
「Aちゃん、大丈夫？」
へ？
「はっ！すみません！」
やばっ！バイト中なのに、考えごとしちゃってた……
気づいたら目の前には刻まれた大量のニンジン。
「なにかあったの？」
女将さんの沙耶さんには、いつもとても良くしてもらっている。
「いえ、大丈夫です。すみませんでした。」
「なにかあったら、すぐに言ってね？」
「ありがとうございます」
「そろそろお店を開ける時間よ。」
沙耶さんに、ちょっと聞いてみようかな。
暖簾を出し終えた沙耶さんに、訊ねる。
「もしもですよ？
もしも、自分が入院して寝たきりになっている時に、余命幾ばくもない旦那さんが病気のせいで自分のことを忘れてしまったとしたら、記憶を失った旦那さんにでも、会いたいと思いますか？」
言い終わって気づいた。
これ、もしもの話になってないや……
「そうね。難しいわね。
会いたくもあるし、会いたくなくもあるわ。
大切な人が自分のことを忘れてしまうなんて、いくつになっても怖くて堪らないもの。
ただ、会わなければ、後で後悔するかもしれないし。
どんな選択をしても、結局人って、選ばなかったもうひとつの選択肢の方を、後から正しかったって思っちゃうものなのよ。
会えば傷つくし、会わなければ後悔する。
ごめんね、参考にならなくて。」
「いえ、ありがとうございます。」
やっぱり、そうなんだよね……
ｶﾞﾗｶﾞﾗ
「いらっしゃいませ」
「あ、Aちゃん。バイト？」
「はい。」
お客さんは山下先生と錦戸先生だった。
二人をカウンターに案内する。
「おしぼりとメニューです。」
「ありがと。」
「お父さんのこと、聞いたよ。
山下にAちゃんに会いたいって言ったら、ここに連れてこられちゃった笑
お父さんとお母さんのことについて、いまちょっとお話ししてもいいかな？」
話は聞きたいけど、バイト中だし……
困ってしまい沙耶さんの方を振り返ると、どうぞと微笑んでくれたので、お言葉に甘える。
「お父さんのこと、お母さんに話すつもり？」
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作者名：ぽん | 作成日時：2017年5月22日 16時
