･ ページ20
「Aちゃんだよね。
大丈夫…じゃなさそうだね。とりあえず小児科の外来まで行こうか。」
そんなに、優しくなんかしないでよ。
これからは、私が家族みんなを支えなきゃダメなんだから…
人に頼らなくても、一人でできるようにならないと、しっかりしないとダメなんだから…
「ｺﾞﾎｯ 大丈夫……です ｺﾞﾎｯ ｾﾞｰｾﾞｰ
ひと りでなん ｺﾞﾎｯ とかでき ｺﾞﾎｯ ます」
「たまには人に頼るってこと、覚えた方がいいよ。」
次の瞬間には体がフワッと浮く感じがし、気づいたら山下先生に抱っこされていた。
弱ってるときに優しくされたせいで、涙を止めることができなくなる。
「ごめん！抱っこされるの、そんなに泣くほど嫌だった？」
山下先生が慌てて私に聞く。
泣きすぎて喋れない私は必死で首をふって否定するしかできない。
山下先生の優しさが、傷ついた心にしみる。
そうこうしているうちに、小児科の外来までついた。
「松岡先生！屋上でAちゃんが！」
山下先生の声に、急いでやってきた松岡先生から点滴と吸入をされている間に、涙と喘息はだいぶおさまった。
点滴をされている間、ずっと考えていた。
これから、どうするべきなんだろう…？
どれだけ考えても答えは出ず、頭の中がグチャグチャになっていく。
「A、山下先生から屋上でうずくまってたって聞いたんだけど、何があったんだ？」
点滴が終わった頃にやってきた松岡先生に聞かれる。
「大丈夫、なんでも…」
そういいかけたときに、さっきの山下先生の言葉が頭をよぎった。
なぜその言葉を素直に受け止めたのかは分からない。
でも、次の瞬間、私は口に出していた。
「やっぱ違う…いろいろあった…」
予想外の私の反応に驚いたのか、松岡先生は目を丸くしている。
「俺に、話してくれないか？」
私は、お父さんのことを松岡先生に話した。
松岡先生は、時折涙でつっかえる私の話を、真剣に聞いてくれた。
「お母さん、ストレスは厳禁なんだって。
だから、お母さんにこんなこと言えないし…
弟たちだって、自分たちのことを忘れてしまったお父さんに会ったら、すごく傷つくと思うし。
かといって、会わせなかったら会わせなかったで、亡くなってからきっと後悔するんじゃないかって。
もう、どうしていいか分からない」
「そうか。でもな、どうすればいいかってことに、正解はないぞ。
だから、一生懸命考えろ。悩め。
そして、最後はお前が自分で考えて選択しろ。
俺はいつでも相談にのるし、その選択を応援する。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽん | 作成日時：2017年5月22日 16時
