過去 〜父の悪化〜 ページ19
ここからしばらく、過去に入ります。
今日も両親のお見舞いに行く。
「お母さん、調子、どう？」
「ひまだねー。ま、お腹の子と一緒にがんばるよ。」
切迫早産のせいで、母はベッドの上から動けない。
「みんなの様子、どう？泣いてない？」
「大丈夫。みんながんばってるよ。」
「そっか。よかった。」
しばらくお母さんとおしゃべりして、お別れをする。
「今度の休みは、みんなも連れてくるね。」
「うん。無理、しないでね。」
「大丈夫だって！じゃあね！」
いつもなら、お母さんと別れると、今度はお父さんの病室にいく。そして、少しおしゃべりをしてから洗濯物を回収して帰る。
でも今日は、違う。
お父さんの主治医から、お父さんの病状のことで、話があるらしい。
今朝、そんな連絡がきたんだ。
寝たきりでストレス厳禁な今のお母さんに話を聞かせるわけにもいかないので、今日は私が先生から話を聞く。
良い話だといいんだけど……
いきなり連絡がきたということは、恐らく悪化したとかいう話なんだろうとは思っても、希望は捨てられずにいる。
「橘さんの娘さんですよね。
早速ですが、この画像をみてください。」
そういって見せられたのは、2枚の頭のレントゲン。
正直、みたからといって、私には何がなんだか分からない。
「ここ、分かりますか？これがお父さんのガンなんですけど、こっちが初めて診察にきたときの、こっちが本日とったものです。
ここ、このガンの部分が大きくなって、こちらの記憶する機能をもつ部位の方まできてしまっているんです。」
怖い……怖い……聞きたくない！
「お父さんは今日、記憶障害の症状が出始めました。
もう、長くはないでしょう。」
いや！いや！いや！
気づいたら私は、呼び止められる声をも無視して、病院の廊下を走っていた。
そのまま階段をかけあがり、屋上にでる。
ﾋｸｯ……ﾋｸｯ……
涙が止まらない。
階段をかけ上がったことと泣いたことのせいで、息が苦しくなってきた。
ｺﾞﾎｺﾞﾎ……ｾﾞｰｾﾞｰ
発作、久しぶりだな。
ほんとに、嫌なことばっかり起きる。
苦しさのあまり、その場にしゃがみこんでしまう。
「大丈夫？！」
…え？この人、この前の…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽん | 作成日時：2017年5月22日 16時
