・ ページ10
「ちょっと診せて。」
頷く間もないまま、成亮さんが私の手を取る。
悩んでいる顔は、事が深刻だということを意味してしているようで恐怖心が増してくる。
「これ、病院で取ってもらった方が良さそう。」
「え？病院行くの？！
このまま抜いてよ…」
「釣り針って、喰い付いた魚が逃げないように、返しっていうのがあるの。
だから、こんな感じに深めに刺さったのを抜くのは麻酔なしじゃできないんだ。」
麻酔ってことは、手に注射するの？
考えただけで涙が止まらない。
そんな私を余所に、成亮さんは帰り支度を進めている。
せっかく休みの日に釣りに来たのに、迷惑かけちゃった。
一人で言ってたら、ゆっくり楽しめたのに。
そんな考えが頭に浮かぶと、罪悪感からさらに涙の勢いが増す。
「そんなに泣かないで。
救命も優しい先生ばっかりだよ？」
そうか、日曜日だから救命に行くしかないのか。
あそこ、大嫌いなのに。
「俺の同期もそこにいるから、手が空いてたら診て貰えるようにお願いしよっか。」
私を気遣ってくれる成亮さんだけど、そうされると申し訳なさもプラスされてくる。
「ごめんなさい。
せっかく釣りに来たのに…」
「そんなこと、気にしなくていいの。
…一緒に釣りに行きたいって言ってくれただけで
凄く嬉しかった。」
そして、言い逃げするかのように片付けの続きを始めた。
申し訳なさは残るものの、成亮さんにそう言われたのはやっぱり嬉しくて、涙が少し引っ込んだ。
「じゃあ行こっか。」
成亮さんに連れられてきた救命は、思っていたよりも混んでいた。
良かった。これなら呼ばれるまでに時間が掛かるだろう。
と、思った矢先だ。
「加藤Aさん、二番診察室にお入りください。」
まさかの順番無視に、驚愕する。
「なんでぇ？まだいっぱい待ってる人いるのに。」
「日曜日の昼間は、急を要する人の受診は少ないからね。
優先順位が上だと思われたんでしょ。」
成亮さんが耳打ちする。
「ほら、中に入るよ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 386人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NEWS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱる - いつも楽しく読ませていただいています！リクエストなのですが、主人公ちゃんが高熱が出てしまって、辛くて成亮くんに伝えようと思うけど、成亮くんが忙しくて主人公ちゃんが言えなくて、成亮くんが家にいない時に家の中で倒れちゃうようなお話が読みたいです！ (2019年9月14日 18時) (
レス) id: d682aba4cc (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - このお話大好きです！！何度も読み返してます^ ^更新楽しみにしています！ (2019年8月29日 4時) (レス) id: 12bc81e91e (このIDを非表示/違反報告)
さくら - このお話とても好きです(*^^*)更新楽しみにしています！大変だと思いますが無理せず頑張ってください！ (2019年6月2日 10時) (レス) id: 6473092b8f (このIDを非表示/違反報告)
なや - 更新待ってます (2019年4月7日 9時) (レス) id: 370aedeca5 (このIDを非表示/違反報告)
みけねこ(プロフ) - 加藤さんが優しくてとても楽しく読めました。また優しい加藤さんのお話待ってます。 (2019年3月13日 18時) (レス) id: 5ac0d2c424 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：作者 | 作成日時：2018年9月28日 22時
