許婚はお医者さん 2 緑

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帰ってきて、成亮さんがご飯を作っている間、私はただソファに座ってテレビを見ていた。

成亮さんの方が疲れているはずなのに、申し訳ない。



「やっぱり、なんか手伝うよ。」



「そこでテレビ見ててもらうのが、1番の手伝い。
その状態でいろいろやろうとされたら、心配で作業に集中できないから。」



なんか悔しい。

だけど、手伝って迷惑だって思われるのは嫌だから、大人しくしておいた。



「Aさん、ご飯できたよ。」



しばらくして、成亮さんが私を呼んだ。

今日のご飯は、肉野菜炒めと煮物だ。

それらはすべて、私がスプーンでも食べやすいように、小さくカットされている。

忙しいのに、こんなところにまで気を遣わせちゃった。



「ごめんね、迷惑かけて。
細かくするの、面倒だったでしょ。」



「別に、包丁さばきには自信あるから。
早く食べよ！」



せっかく小さく切ってもらったのに、それでも左手でスプーンを使ってとなると中々上手にいかない。



「あーあ、左利きだったらもうちょっと食べやすいのに。」



「左利きだと、普段不便だよ。
というか、人参とピーマンを避けようとするから、食べるのが大変なの。
好き嫌いしないで食べな。」



煮物の人参と、炒めもののピーマンは、私にとってのかなりの強敵だ。

食べにくいスプーンと左手でそれらを避けながら食べ進めると、皿の上は人参とピーマンのみになった。



「もうお腹いっぱい。
スプーン使うのも疲れちゃったし。」



もういいかなと思い、成亮さんにごちそうさまをする。

だけど、成亮さんは目ざとく揚げ足を取ってきた。



「スプーン使うの疲れたなら、俺が口まで運んであげよっか。」



……うん？要するに、アーンってこと？

ダメ、恥ずか死する。



「自分で食べる」



結局、成亮さんに脅されて完食した。



「ごちそうさま。」



口の中には、まだ人参とピーマンの形跡が残っている。



「良かった。
俺も口に運ぶのは恥ずかしいし、ムリだから。
やるなら手越クラスじゃないと。」



おい、お前。



「ひど！」



「じゃなきゃ、食べなかったじゃん。
マッサージするから、機嫌治してよ。」




「痛くない？」



この前の腰のは絶叫ものだったから、ここはしっかり確認しておきたい。



「痛くないよ。ハンドマッサージだから。」



結果、成亮さんの言う通りマッサージはとても気持ち良かった。

その後もそんな生活が続き、3週間目でやっと職場復帰の許可が出た。

これからまた、暇すぎてなまった体に鞭打って仕事を頑張ろう。

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