私と義兄の家族日記 (ページ3)

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「…まっすー？」

気がつくと、真っ白な天井に、心配そうな顔をしてこちらを見ているまっすーがいた。

「良かった。気がついたみたいだね。
看護師さん呼ぼっか。」

そういってナースコールを押した。

意識がハッキリとしてくるにつれ、お姉ちゃんのことの衝撃が再び襲ってくる。

「…慶ちゃんは？」

「小山はいま、色々と事務的なことで忙しくて。
呼んでくるか？」

「ううん。大丈夫。」

あんまり甘えちゃダメだ。

お姉ちゃんが亡くなった今、私と慶ちゃんを繋ぐものはない。

「本当に大丈夫な奴は、大丈夫なんて言ったりしねーよ。」

まっすーの指摘は鋭くて、言葉に詰まってしまう。

「失礼します。」

言葉に詰まってしまった私を救うかのようなタイミングで看護師さんとお医者さんが様子を見にきた。

「もう大丈夫そうですね。
念のため今日は、ゆっくりと過ごしてください。」

軽く診察をしてそう言うとカーテンの向こうへ出ていき、再びまっすーと二人きりの空間になった。

「…私さ、やっぱり施設か親戚の家にいく運命だったのかな。

お父さんとお母さんが亡くなったときも、もう社会人だったお姉ちゃんはいいとして、私は施設か親戚の家にいく予定だったからさ。

お姉ちゃんが必死に親戚を説き伏せてくれたおかげで、お姉ちゃんと一緒に暮らせたけど。

あーあ…行くなら施設がいいなー。
うち、親戚とあんまり関係が良くないんだよね。」

本当は、想い出が詰まったあの家でこれからも暮らしたい。

でも、本音は言っちゃダメだ。

そんなことを言ったら、困らせてしまう。

そんな私の気持ちを見抜いていたのか、まっすーは悲しそうな顔をして、黙ってしまった。

「もー、何バカなこと言ってんの。
施設とか親戚の家なんか行かなくても、Aちゃんにはちゃんと帰るお家があるでしょ！」

沈黙を破ったのは、カーテンを開けて入ってきた慶ちゃんの、意外な言葉だった。

「でも、一人じゃ暮らせないよ。
お金もないし、まだ働けないし。」

「俺、社会人だよ？それなりに稼げるから。」

一瞬、何を言ったのか分からなかった。

「え？あの家で、一緒に暮らすってこと？」

ようやく頭の整理がついて慶ちゃんに訊ねる。

「うん。もちろん、無理にとは言わないよ。
Aが良いと思う選択をすればいい。
でも、本当はあの家、離れたくないんでしょ？」

慶ちゃんの言葉に、色々な想いが溢れ、泣きながら頷くことしか出来なかった。