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赤色side
『俺のお母さんってどこにおるの？』
淳太に聞こうとしたのはそんな質問。
けどさ、言いにくいやん。
｢…じゃがいも、ちっさ。｣
小さいじゃがいもを手に取って、ため息をひとつ。
それはじゃがいもが小さいことに対してじゃなくて、質問ひとつをするために何日もかけてる自分に対してだった。
こんな質問ひとつで、って思われるかも知らんけど、俺にとっては結構大きいこと。
何が怖いんやろ。
お母さんはもう居ないってことを知ること？
自分は捨てられたんだって知ること？
…いや違う。
淳太に悲しい顔をさせること。
もし俺の知らない真実が淳太とかあそこの家におる大人たちにとって苦しいものだったら。
知らないままでいい。
にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉、カレーのルーが入ったカゴを持ちながらそんなことをずっと考えていた。
･
ｶﾞﾁｬ
｢ただいま｣
黄｢おかえりー｣
リビングに入るとソファでくつろぐ淳太の姿が。
黄｢ありがとうな｣
｢ううん。｣
いつも、淳太がやってくれてるから。
黄｢よし、作ろうか｣
｢うん。｣
2人でエプロン巻いて、手を洗う。
たぶん、俺らは準備は早いけど作業が遅いタイプ。
料理苦手やからな。
黄｢…なんか、あれやな｣
｢ん？｣
黄｢緊張する｣
｢なんでや笑｣
黄｢えー、しないん？｣
｢せえへん。笑｣
黄｢俺だけ？｣
｢淳太だけやで｣
とか喋りながらやるから進まないんやろうな。
｢俺、人参やるから淳太じゃがいもやってや｣
黄｢だい、にんじん大丈夫なん？｣
｢切れるわ｣
黄｢ごめんごめん笑｣
にんじんくらい切れるわ。
たぶん淳太より料理上手いし。
ビューラーを取り出して皮をむいていく。
その間も止まらないのは例の悩み事。
聞くか聞かないか、良いのか悪いのか、
知りたいのか知りたくないのか。
ｼｭｯ
｢いっ、｣
黄｢あ、｣
｢うわ、｣
ビューラーで切れた中指。
気がつけば淳太の手に包まれて水で赤いものが流されていく。
と思えば次はティッシュに包まれて手をひかれる。
黄｢ぼーっとしてたやろ。｣
自分で押えて、って言われたから、右手で左手の中指をぎゅっと握る。
不思議と全く痛くない。
｢…ちょっとだけやし｣
絆創膏を持ってきた淳太は、心做しかちょっと怒ってるような。そうじゃないような。
｢…怒ってる？｣
黄｢まったく｣
怒ってるー！
…なんて言えへん。
｢…ごめんなさい｣
そういうと淳太は悲しそうな顔をした。
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作者名：kana | 作成日時：2022年2月11日 13時
