１２昔のはなし-3 ページ13
･
それからというもの、Aは遊びに誘われなくなった。
毎日のように家まで誘いに来てくれていた子も、来なくなった。
それでもAはみんなと遊びたい一心で公園に向かった。
事情を知るAの母親、月居 水琉はそんなAの様子を心配そうに、毎日出かけていくAの後ろ姿を見送っていた
･
「みんな！遊ぼ！」
「……行こー」
「そうだねー、行こ行こ」
話しかけても無視される日々。
「みんな、あのときはごめんね」
「…毎日謝られたって、私たち痛かったんだもん！！」
「もうあんな思いしたくない！」
「あっちに行ってよ！」
どれだけ謝っても、どれだけ話しかけても、結局無駄だった。
みんなが去っていった公園でただ一人うずくまり、泣いていたとき。
「どうして泣いてるの？」
「…？」
ふと、後ろから声がした
「大丈夫？」
手を、差し出されてAは戸惑った
「私と一緒にいる所見られたら、いじめられるよ…」
「会わなきゃいいだけだから、大丈夫。ほら」
若干強制的に腕をひかれ、立ち上がらされる
「いじめられてるの？」
「…うん、でも、私が悪いんだ。仕方ないよ」
「…ふーん。なら、おれが守ってあげる！」
「…え？」
そう言って笑いかけてくれた、右と左で髪色の違う男の子。
「轟焦凍って言うんだ！…名前、なんて言うの？」
「…月居、A……」
「じゃあA、よろしくな」
「…！」
にこり、と優しく笑うこの少年の笑顔にこの時Aは救われた気がした
そしてこの日から「轟焦凍」という存在はAのヒーローでもあり、初恋の相手となった
･
･
「…焦凍と知り合ってから“治癒”が使えるようになったんだっけ…」
アルバムを閉じたAは、リビングへと足を運ぶ
「あ、A」
「なーにお母さん」
「焦凍くんと何話してたの〜？」
そのニヤニヤ顔はやはりどこかAに似てる。
いや、Aが似たのか。
「昔のはなし、してたよ」
「そっか〜！明日からも楽しみね〜。これから毎日楽しくなるわね、きっと」
そう言って、ふわりと笑った。
＿＿綺麗だな…
……顔の整っている自分の母親のそんな表情を見て、Aはふとそう感じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おもち
| 作成日時：2019年3月24日 23時
