いや、ただ偶然出会っただけだけど。【灰谷蘭】

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蘭と目が合った。

その瞬間、あ、今世界が終わった…と思った。が。



一瞬目を見開いた蘭だったけど、すぐに眉間にシワを寄せて不機嫌そうに部屋に入ってくる。

手には何やら荷物を持って。



「はー…
びっくりした……倒れてんのかと」




そう言ってさっきまで蘭の服が掛けられていた椅子に
両手に持っていた荷物を置いた。




『え』




き、気付いてない？
私今蘭の服抱きしめてんだけど。

ホントに気付いてない？？




「寝ずになに動き回ってんだよ」


と、どんどん私に近づいてくる蘭。




私がずっと蹲って言葉を発さない為か
首を傾げて心配そうに


「…腹痛てぇの？」


と尋ねてくる。




いや待て待て待て。
ギュッと服を抱きしめて隠そうとするも。




「……は」



…蘭の視線が私の手元へと移った。
しかもそのまま固まる彼。




『……う。』



なんだ、う。って。
う。ってなんだよ私。



…まずい。変態だと思われる。
だがしかしあながち間違ってはいない！！


私も蘭と同じく固まっていると、
フラッと蘭が揺れた。




そして私の視界には蘭の顔だけが映って…。



「オマエさ、俺の事試してんの？」



『え』




いや、え。
…しか言えねぇ。

なんだコレ、顔近。うわ、蘭くそ美人。




『た、ため……ため、』


「……」



パニックで吃る私をジト目で見つめる蘭。
そんなお顔も美人ってどういう事？




「もーキツい」



蘭がそのまま私に跨って顔を近づけてくる。
肩を押さえつけられ、更に足の間に蘭の足が入り込んできた。…身動きが取れない。



『ち、近い！風邪移るよ！』


「好きなだけ移せよ」



顔を背けても片手でまた元に戻される。






＿＿その時。
タイミングよく蘭の携帯が鳴り、
私と蘭の動きがピタリと止まった。


すると蘭は少ししてからポケットに手を突っ込み
携帯を取り出した。



「……りんどーがあの2人見つけたって。
つか学校に来てたらしいぜ」



馬鹿じゃね、と言って笑う蘭。
私の上から降りてくれた。



…いや、待ってください。


切り替え早くね？？？
ずっと火照りが治まらないんだけど。




すると振り返った蘭がそんな私の様子を見て、



「…俺の服抱きしめて何してたの」


と、ニヤニヤしながら尋ねてきた。
あれはもう確信犯だ。




『……引かない？いや、絶対引く。』


「いいから言えよ」


『……』






相手は好きな人だ。
…まじで嫌われたくない。






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