いや、ただ偶然出会っただけだけど。【灰谷蘭】

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「ほら、しっかりつけろよ」



手渡されたのはヘルメット。

私にしっかり付けろと言う割には自分は被ってないし。…え、竜胆も被ってない。



『2人は？』


「いらねー」
「邪魔」


『』




しぶしぶとヘルメットを被る私を
じっと見つめてくる蘭と竜胆。




『…え、な、何？』


「…前閉めろよ」


『……。』




眉間にシワが寄った2人。

前ってなに？状態の私を見て更にイライラしたように
蘭の手が私の下っ腹に伸びてくる。



え、下っ腹出てる！？



…と一瞬焦ったが、蘭が触れたのは竜胆がかけてくれた上着のチャック部分だった。




「透けてんぞ」


『…あ。』



ジジジ、とチャックを上まで閉めてくれた。
え、行動がもうお兄ちゃん……推せる。




「絶対手離すなよ」


『はーい』



バイク股がっていざ出発。
手離すなよとか私得でしかない神様ありがとう。


蘭の服も濡れていて、この酷い雨の中助けに来てくれたんだなと思うと、やっぱりこの2人は優しいと思う。



濡れた肌に風が当たるのは寒かったけど
「すぐ着くから」という蘭の声に安心して
そんな事どうでも良くなった。








･






「ん」


『ありがとう』




アパートの前で下ろしてくれて、それでも十分なのに2人とも“部屋までついてく”との事。




携帯を見てみると時刻はもう20時手前だった。
こんなに時間が経っていたのか。






「…A」


『ん？』



突然口を開いた蘭に首を傾げる。





「お前のその首の跡、誰がやった？」



『…あ』




首元のチャックを少し下げられ、
噛み跡がある場所に蘭の指が触れる。


更にチャックが下げられ、その指はツー…と下に下がっていき、キスマを付けられた鎖骨辺りで止まった。




『こ、これは、…』



いやなんか2人えろくね？

雨のせいか何なのか分からないけど、
色気半端なくね？




「唇のその傷もさ、
さっき殴られて出来たやつじゃねえだろ？」



2人の視線が私の唇に集中する。

…え、な、なんか小っ恥ずかしい。
イケメン2人に見つめられるのってかなりメンタルやられる。




「誰がやった？」


『…き、聞いてどうすんの？』


「わかんね」




わかんねって…随分と1番怖い回答が返ってきたな。
まじでどうすんだよ。



“で、誰？”

と圧を掛けられて、私は視線を逸らしながら答えた。




『優希…』


「……ふぅん」





目がギラギラしてて
あの、2人ともやっぱりなんかちょっと怖いわ。



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