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『あの、手…』
ここでハッとした。
こいつに逆らってしまったら。
「善逸君、だったよね。
ねぇ君、Aちゃんの事をここまで追い詰めてさ
都合よくまた連れ戻しにきたの?」
「……ッ」
善逸の表情が暗くなる。
やめて、傷付けないで。
『善逸は…悪くないんです。』
「……A……ちゃん、」
顔を上げた善逸の大きな瞳からは
ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。
『私が…悪かったの。
善逸は何も悪くないから、やめて…
それ以上、善逸に…酷いこと言わないでよ』
「……君、優しいんだね?」
『…ッ!』
俯く私の顔を覗き込んだ信次郎さん。
……その表情は
先程まで感じていた不気味さよりはるか上、
まるで恐怖を感じさせるような、そんな笑みを浮かべていた。
「…分かったよ。もう言わない
でもさ、君は言うことあるよね?善逸君に。
…ほら、言ってごらんよ?」
首の後ろを掴まれた。
その手はとてもひんやりしていて、余計に恐怖心を煽った。
『…ごめ、』
「早く言ってよ。いいの?彼が」
__“どうなっても”
……そんなの、良くないに決まってるよ。
彼が無事なら私はなんだってする。
『……、善逸…。さっきも言った通り、
私はみんなと別行動する。
…この人と、信次郎さんと組むことにしたの』
「……ッ」
あぁ、見たくなかった。
善逸のこんな表情を見るために従ってるわけじゃないのに…。
私は幸せになるなんて、できないのだろう。
出来ることならもう一度、あの頃に戻りたい__
「……ッ嘘だ!!」
信次郎さんに肩を抱かれ、その場を後にしようとしたときだった。
善逸が、私の手を掴んだ。
私が痛がらない程度の、優しい力で。
「…っ、Aちゃんの心臓の音、
何かに怯えてる。
お前が話す度に、Aちゃんが怖がってる。」
真剣な目で信次郎さんを睨む。
見るからに自分よりも年上で先輩だって事も分かるのに、それでも善逸は信次郎さんに立ち向かっていく。
変わってないなぁ。
やっぱり好きだなぁ。
私の視界もだんだんぼやけていく。
「……うん。
それでもこの子は僕のものになったんだよ」
狂気さえ感じるこの人の言葉。
あぁ、声をかけられた時返事なんてしなければ良かった。
まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかったから。
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かっちゃん - 夢主ちゃん死なないよね!? (2019年10月20日 22時) (レス) id: 7eb86f363f (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - こ、怖っ!言ってる事が!怖い!!こわ (2019年10月20日 21時) (レス) id: 797ba5ed2c (このIDを非表示/違反報告)
美夏 - せっかく、夢主ちゃん幸せになったのに…!これからどうなるの!?気になる…(ソワソワ) (2019年10月20日 21時) (レス) id: f5d18b0d48 (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - 二人共幸せそうだからいいけど、信次郎と深琴が何か同盟みたいなの組みそうで怖い……。頼むから邪魔が入らないでくれぇ……!(入ってもいいけど最終的には幸せになってェ……!!) (2019年10月20日 20時) (レス) id: 970ab90d10 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 美夏さん» よかった!もう邪魔が入りませんように(;▽;) (2019年10月20日 17時) (レス) id: 9123ab14eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おもち | 作成日時:2019年10月13日 4時