4話 ページ5
「こんにちはー！」
居間には父と美来とその旦那と伯父夫婦がいた。
「鈴久しぶり、玲は？」
美来が持ってきてくれた座布団に膝をつきながら答えた。
「混んでたから別々で来た。もうすぐ来ると思う。
あ、あとアイスありがとう。めっちゃ食べたかった」
来た後絶対鈴がアイス買いに行く未来が見えたから、と言って注いでくれた麦茶を渇いた喉に流し込んだ。
「今日はご飯遅めかな、」
「うん、鈴アイス食べたからお腹空いてないだろうし私達もさっき軽くお菓子食べたから。第一、まだ皆揃ってないしね」
「なるほど」
アイスの棒をゴミ箱に捨てるのと冷蔵庫の中身を見る為に台所へ行った。
台所の机に見慣れない大きさの袋が置いてあった。
「今日お寿司？」
珍しい。
だいたいお盆はスーパーのオードブルに酒がテンプレなのに。
「そうね、玲が恋人連れてくるって言ってたから」
「は？」
ちょっと待て。
腐女子の夢はどこ行った？
実は、妄想出来る男性はそれなりに居た。が、全員彼女が出来た。
玲までNLに染まってしまったらこれから何を材料に三次元の妄想すればいいのか。
そちらに考えがいってしまった。
気を紛らわす為にとりあえず冷蔵庫を開けた。
予想通り飲み物類は見あたらず、中途半端につぶされた空き缶が無造作にゴミ箱に転がっているだけだった。
「母さん、飲み物買ってくる」
「あ、それならビール買ってきて」
居間に戻って財布をポケットに突っ込んだ。
「お出かけ？」
「うん、ゆずも行く？」
そう訊くと行く！と嬉しそうに答えた。
「いいよね？みくちゃん」
「お願い。あと、度数低めの何本か買ってきてくれると嬉しいな」
美来は酒に物凄く弱く、すぐに寝てしまう。
3%でギリギリ30分保つぐらいだ。
「分かった、父さん達と直樹さんは？」
直樹は柚葉の父親の名前だ。
「俺らは普通にビールで」
「了解です。ゆずは…行ってから考えればいっか、それじゃ行ってきます！」
近くのコンビニで缶ビール9%(6本セット)×3、ストロングゼロ9%(6本セット)、檸檬堂3%×5、ほろよい(もも)3%×5の計34本買った。
あとは麦茶とオレンジジュース。
「重たー…買いすぎちゃったなぁ…」
「だいじょーぶ？ゆず手伝うよ！」
「ありがとう、じゃあジュースとお茶持ってくれる？」
柚葉にペットボトルを二本渡すとだいぶビニール袋の中が軽くなった。
「ありがとね、すごい軽くなった」
歩いたせいか若干気持ちも晴れた。
行きとはかなり違う軽い足取りで家に帰った。
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