2話 ページ3
今、鈴がやけに玲の顔を見つめてくる。
「どしたの、鈴」
少しためらうような間が空いた。
「いやぁ、兄ちゃんは嫌がるかもしんないけどさ、」
そこでまた、言われる側からしたら不安でしかない一拍が空いた。
「兄ちゃんってほんっと受けだなって」
不安を押し流すように喉まで飲みかけていた水が一気に逆流した。
「ちょっ、びっくりしたぁ…」
咄嗟に口に当てたおしぼりを指差して、まだ咳の残る声で言い返した。
「うわっ、ごめん。すみません、ホットのコーヒー
一杯下さい」
冷たいものをあまり受けつけない玲の身体を考慮してか、鈴がホットコーヒーを頼んだ。
「ありがと、」
「ごめんごめん、でも事実よ、お兄ちゃんが受け顔なのは。髪伸ばしたらただの可愛い女の子に間違われるよ、絶対。肌白いし、体つきも細いし」
若干「可愛い」を強く言ったように聞こえたのは勘違いだろうか。
「それと、」
一度咳払いして口を開いた。
「私の性癖、病弱受けなの。」
忘れていた。
鈴は根っからの腐女子。
「それは分かった、でも、性癖とかあけすけに言わないで…」
こっちが恥ずかしいから。と言い添えると「はぁい」と気の抜けた返事が返ってきた。
「せっかく可愛いのにー」
「関係ないよね、それ。」
病弱受け＿鈴が玲を受けとする根拠でそう付け足した理由。
玲は体が弱く、かなり回復した今でも必ず月一で熱を出している。
しかし昔は物凄く酷く、幼い玲の命に関わる事ばかりで入退院を繰り返していた為、疲れ果てた両親は
〈『亜鈴(アレイ)』のように強く生きろ〉
という意味で翌年生まれた妹に「鈴」という名をつけた。
名は体を表すというが、その通り鈴は23年間少しも病気する事なく元気に生きている。
「ていうかほんっと謎だよねー、なんで2人目作ったんだか。まぁ、そのお陰で私はかわいいかわいい受けを間近で見れてるからいいけど。あー、どっかに攻めいないかなぁー」
「え、僕の事抱かせる気？」
とんでもない返答をしてしまった。
「ん、抱かれたいの？」
あー、やっぱりこうなった。
「そういう事じゃない！」
ざーんねん。そう言った鈴をあえて無視してカフェを出た。
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