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喫煙所から出るといつものベンチにはローが座っていた。
その隣へ腰掛けるとローに「たばこくせぇ」と言われる。
「煙草じゃねぇよ。葉巻だ」
「…かわんねぇよ」
「そういえば今日ゆっくりだったな」
別に理由が知りたいわけではない。
気持ちのいい風に頬を撫でられて考える前に口から出てしまった。
「パンだったから」
「あ？」
「パンはきらいだ」
嫌いなもんが昼食に出たから、食べるのに時間がかかったのか。
子供らしいところあんじゃねぇか。
ローは妙に大人びている。口調も好みも出で立ちも。
スモーカーは少し安心した。
「なぁ、はくりょうや」
「なんだ？その白猟屋ってのは」
「おまえだ」
「俺はスモーカーだ」
「はくりょーやでいい」
随分と勝手なことを言われていると思った。
それでもこの子供が自分を呼んでくれたことが嬉しかった。
「俺に何か聞きたいことでもあったのか」
「はくりょうやは、いつまでここにいるんだ？」
「明々後日退院だ。今日入れてあと4日だな」
「そうか」
「寂しがってくれるのか？」
「そんなんじゃねぇ！！」
ムキになるこの子供が可愛らしくて、ふっと笑みをこぼす。
「お前もその足早く治るといいな」
「おれは、なおらなくていい」
そう言ったローの顔に影が差す。
何かまずいことを言ってしまったのだろうか。
「おれだけ、いきのこっちまった」
スモーカーは嫌な予感がした。
それでも小さく呟かれた言葉を逃してはいけないと思った。
家族旅行に行く途中、大きな事故に巻き込まれたらしい。
「父様も母様も、ラミも。ぜんいん死んだ」
運よく一人だけ生き残ったローも、大怪我をしておりこの病院に運ばれた。
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作者名：きんぴら | 作成日時：2020年3月8日 23時
