嘘五十と五つ ページ5
「あはは・・・」
もう笑うしかない。
まるで子供の背比べだ。
「このペテン師は不思議と『嘘憑き事件』を吸い寄せる。
警察で把握している『嘘憑き自分』は十一件だが、そのうち五件をコイツが解決している」
「えっ・・・凄いです、太宰さん!」
真依は素直な気持ちを吐露したのだが、太宰は心底嫌そうな顔をした。
「いきなり何なんだい。
気持ち悪いよ」
「うっ、素直に褒めたのに、そこまで言わなくてもいいじゃないですか」
「普通、他にもっと気になることが出てくるんじゃないかい?」
気になることと言われても、とっさには浮かばない。
「どうしてペテン師がそれだけの『嘘憑き事件』に関われているか、だな。
一介の探偵にしては多すぎる」
「あっ、なるほど」
「それは警察でも不明だ。
ただ事件が東京に集中していること、コイツが独自の情報網を持っていること、そしてコイツが嘘憑きに対して異常に鼻が利くこと・・・その辺りが合わさっているためだと考えている」
「臭うんだよ。
嘘憑き特有の下種な臭いが、ね」
真依は不思議に思った。
太宰は自分のことを『嘘つきだ』と公言している。
にも拘らず、嘘つき自体を否定しているように聞こえる。
どういうことなのだろうか。
そのまま翻訳すると、自分をけなしていることになってしまう。
初めて会った時、『人は嘘を欲している』と言っていた。
ということは、嘘が人に必要なことと認識していることになる。
ただしそれがいいものとは思っていない。
悪いものだけど、必要だから使っている・・・。
つまりは必要悪と考えているのだろうか。
だとすればより分からない。
嘘が必要悪だと考えているなら、できれば避けたいと思うのが普通だ。
わざわざ率先して嘘を使う必要はない。
偽悪趣味?
むしろ自傷行為に近いだろうか?
考えれば考えるほど分からなくなったため、真依は一度頭の隅に考えを置いておくことにした。
「数多くの『嘘憑き事件』を解決しているから、警察はこいつに協力を求めることにした。
その一環として『嘘憑き事件』を担当している俺の課から、こいつの元に一人派遣することになった。
だから俺はこんなやつの手伝いをさせられているというわけだ」
真依はポンっと手を叩いた。
「そういうことだったんですね。
国木田さんは刑事なのに、どうして探偵事務所で助手をしているのか不思議だったんです」
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作者名:アオ x他1人 | 作成日時:2018年3月6日 23時