嘘八十と九つ ページ39
「ありがとうございます!」
「感謝しても状況は変わらないのだよ。
無事な可能性があるとわかっただけさ」
「それでもありがとうございます」
「おい、太宰。
俺は自宅の住所は調べたが、別荘の場所までは知らないぞ。
貴様は知っているのか?」
国木田はすでに次の動きに対応しようとしている。
それが真依は嬉しいかった。
「いや、慈恵さんからあると聞いただけ。
フェイスブックとかに情報はなかったかい?」
「そういえば・・・」
国木田はノートパソコンに向かうと、マウスを動かした。
「あった。
場所は・・・山中湖だな。
ここまで分かれば貴様の情報網なら場所を割り出せるんじゃないか?」
「いけるね。
その画像、私のメールに送ってくれたまえ」
「わかった」
国木田がノートパソコンから太宰のスマホにメールを送信する。
真依は情報の集め方に二人の特色が出ていると感じた。
国木田は地道な調査で、太宰は独自の情報網で情報を集める。
方法が完全に別の領域なだけに、合わさった時に強い。
瞬く間に話は進んでいく。
やっぱりいいコンビだ、と真依は思った。
「ねぇ、雑巾」
太宰が突然真依を呼んだ。
「あの、だから私は雑巾ではないと・・・」
「キミ、シェアメイトだったんだから、奥苑 未玖の写真を持ってるよね?」
抗議を軽く無視されたのはショックだったが、未玖のことならそっちの話が優先だ。
「スマホの写真でしたらありますけど・・・」
「国木田くんにあるだけ送っておいて。
それで国木田くん、今言ったもの、昼までに作れるよね?」
「作れるが、貴様は?」
「寝る」
自分だけ働かせておいて貴様は寝るのか、と国木田は怒ったが、太宰はあくびで受け流すだけだった。
室内が静かになったことで、真依は手が震えていることに気づいた。
昨夜、未玖の失踪に来栖が携わっている可能性が高いと分かってから、嫌な予感はしていた。
そして今日になり、危険は兆候は増えていっている。
やっぱり未玖ちゃんは何も言わずに姿を消すような子じゃなかった。
真依は警察も未玖の両親も信じてくれなかったことが真実となって明らかになりつつあることに気づき、ぎゅっと胸の前で手を合わせた。
追い求めていた真実の箱に入っていたのは、希望ではなく絶望なのかもしれない。
でもここまで来たのだから、退くわけにもいかない。
「全力を尽くす」
国木田は気休めを言わなかった。
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作者名:アオ x他1人 | 作成日時:2018年3月6日 23時