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嘘八十と三つ ページ33

裏に副社長の葉摘 来栖がいる。

それがわかったのは大きな収穫だった。

しかし勝利と呼べるほど気持ちのいいものではなかった。

慈恵はきっと未玖の失踪に関わっているだろう。

だがこんな姿を見ては、単純に憎むことができなかった。

「市野江さんを家まで送る。
お前はこのまま家に帰れ」

「でも・・・」

「市野江さんの家までタクシーで一時間はかかる。
そうすると終電がなくなるんだよ」

「じゃあお兄ちゃんはどうするの?」

「市野江さんを家に送ったら、漫画喫茶にでも入って始発まで時間を潰す。
お前は明日用事があるんだろ?」

これはつまり、慈恵と二人っきりになりたいという合図だ。

「そこまでしていただくわけには・・・」

慈恵は立ち上がろうとしていたが、その足元は覚束ない。

大宰は素早く慈恵を支えた。

「・・・わかった。
お兄ちゃん、市野江さんに変なことしちゃダメだよ?」

真依がそう告げると、大宰は断言した。

「絶対にそんなことはしない」

この人は大丈夫、と安心できるようなはっきりとした口調だった。

いつもこれくらい誠意があればいいのに、と真依は心の中で呟いた。

大宰が呼んだタクシーがやっ来る。

乗り込んだ二人を真依はてを振って見送った。

二人が見えなくなったところで国木田が姿を現した。

「あれがやつのやり方だ。
反感を持つか?」

真依は道端に転がっていた小石を蹴った。

「正直なところ、こういうことはあまりしたくありません。
ただこういう方法を取らなければ未玖ちゃんに繋がる情報が得られなかっただろう、とも思っています」

「そうか」

「けど、市野江さんはこれからどうなるんですか?」

取り乱す慈恵はあまりに哀れだった。

もし来栖に脅されて悪事の片棒を担がされたのであれば、あそこまで追い詰めるのは可哀想だった。

「事件の全容がわかるまでは警察が手を出すことはない。
今日わかったことはあくまで状況証拠であって、物証ではないからな。
それに・・・大宰があの女を救うだろう」

「えっ?」

真依は国木田を見上げた。

「大宰は今日、知り合いの税理士や行政書士に連絡していた。
おそらく市野江 慈恵の借金の負担を軽くする方法を調べていたのだろう」

「でも大宰さんの経歴、全部嘘ですよ?
なのに・・・」

「その嘘を突き通すつもりなのだろう。
そしてうの経歴で女を助け、嘘と告げず消える。
そういうやり方の男だ」

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作者名:アオ x他1人 | 作成日時:2018年3月6日 23時

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