嘘七十と五つ ページ25
指摘するべきところは指摘しなければならない。
「っと、そうだな。
すみません、蔵永さん」
「いえ、気になさらないでください」
ふと大宰はポケットから携帯を取り出し、テーブルに置いた。
「すいません、今、ちょっと連絡待ちをしていまして」
大宰がボタンを押すと、画面に明かりが灯った。
映し出された待受画像に慈恵は釘付けとなった。
「ペルシャ猫・・・飼っているんですか?」
待受画像には大宰がペルシャ猫と戯れている姿が映し出されている。
無論事務所で猫など飼っていない。
大宰の話では、さっき猫カフェで撮ってきたとのことである。
「ええ、オレ、猫が大好きなんです。
蔵永さんもですか?」
慈恵は手を膝に落とし、身体を前に倒した。
「はい。
特に猫でもペルシャ猫が大好きで、家で飼っているんです。
引っ越す時、まずペットが大丈夫なことを条件にあげたくらいなんですよ」
先ほどまでとはうって変わって饒舌になった慈恵に、真依は驚きを隠せなかった。
国木田の報告にあったペルシャ猫好き。
やはり人間、好きなもののことになると口が軽くなるものらしい。
「アメリカンショートヘアーやメインクーンと迷ったんですけど、オレもやっぱりペルシャ猫が一番だと思いまして。
気が合いますね!」
真依は大宰がいつもどのように口説いているのか分かった気がして、暗澹たる気持ちになった。
どうせこんな感じなのだろうと想像はしていたが、目の前でやられるとさすがに気分が悪い。
「メインクーン、いいですね。
一度猫カフェにも行きたいとは思っているのですが、なかなか時間がなくて」
「新宿にいい店がありますよ。
もしよかったらご案内しますが」
「あ、いえ、でも・・・」
慈恵は言葉を濁し、首に手を当てた。
さすがに嘘の名前を語った相手と付き合いを深めていくのには抵抗感があったのだろう。
「お兄ちゃん」
真依は大宰を咎めた。
口説いちゃダメだぞ、としっかり者の妹をアピールする。
大宰は丁重に言った。
「あ、無理に誘っているわけではないんです。
ただ本当におススメなので、行ってみるといいですよ」
うわぁ、完全な好青年だ。
公務員らしい真面目さアピールが普段と違いすぎて、真依は鳥肌が立った。
「はい、ありがとうございます」
「いやぁ、こんなところで趣味の合う人と会うとは思ってもいませんでした」
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作者名:アオ x他1人 | 作成日時:2018年3月6日 23時