嘘七十と一つ ページ21
「あ・・・ありが、とう・・・」
国木田は照れ臭げに頬を掻いた。
そして恥ずかしかったのか、早口で言う。
「しかしキミも大変だったな。
ナンパにでもあったのか？」
「ええ、まさか私がと思ったのですが。
東京だとこんなことよくあるんですか？」
「いや、そんなことはないだろう。
ただキミが・・・かっ・・・かっ・・・」
「か？」
急に国木田は言葉を濁して俯いてしまった。
何のことか分からず真依は首を傾げた。
「んんん〜？
理想くんは何を言おうとしていたのかな〜？」
太宰はニヤニヤしなかまら国木田の肩に手を回した。
「馴れ馴れしく触るな！」
「あれれ〜？
何動揺してるの？」
「殺す！
貴様は絶対に殺す！」
太宰が軽やかに逃げ出し、国木田が鬼の形相で追いかける。
そんな二人を見て、真依はため息をついた。
国木田は慈恵が出てくるのを確認するため、エレベーターのところに移動した。
真依と太宰は駅の正面出口から出てすぐのところにある、コーヒーショップの影に隠れていた。
慈恵が降りてきたら、国木田からの連絡が来る手筈となっている。
真依はエスカレーターを監視する太宰の服装に目が止まった。
うん、やっぱりいい。
いつものチャラい感じより、今のビシッとした着こなしの方が断然好みだ。
こんな好青年風にできるなら、いつもしてくれればいいのに。
そう真依は思ったが、言ったら怒られるだろうから言わないことにした。
携帯の着信音が太宰のポケットから鳴った。
「ああ、そうか・・・わかった」
それだけ言って太宰は携帯電話を切った。
「ターゲットがもうすぐ来る。
打ち合わせ通りちゃんとやってよ」
「は、はい！」
真依は姿勢を正した。
まもなくして慈恵がエスカレーターを降りてきた。
太宰が目配せしたため、真依は無言で頷き、横に並んで歩き出した。
そしてすれ違う寸前、太宰が自然な仕草で軽く慈恵にぶつかった。
「失礼」
「いえ」
そう会釈して離れた瞬間、太宰は突如目元に手を当てた。
「あれ・・・」
太宰が慌てて周囲を見渡す。
突如のことに慈恵が立ち止まった。
「どうしました？」
「すいません、コンタクトを落としたみたいで・・・。
ねぇ、僕についてないか？」
真依は太宰に近づき、頬や肩に視線を走らせた。
「お兄ちゃん、ないみたい」
「じゃあ下に落ちたか？」
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作者名：アオ x他1人 | 作成日時：2018年3月6日 23時
