嘘五十と九つ ページ19
真依は太宰に対し、苦手意識が残っていた。
でも、それだけじゃなく、もっと知りたいという願望も湧いてきていた。
「かわいこちゃんはっけ〜ん」
「あれれぇ〜、キミ、何しているの〜」
柄の悪いふたり組が現れる。
真依はとっさに背後を見た。
さすがにこの時間だけあって、人がいない。
「お前だよ、お前!」
「えっ、私のことですか!?」
まさか自分が『かわいこちゃん』なんて呼ばれるとは思っていなかった。
これが美容院に行き、服や靴を新調した効果なのだろうか。
「そうそう、暇なんでしょ?
飲むの付き合ってくれよ〜」
「ええと・・・」
ナンパなんてされるのは初めてで、私なんかでよいのだろうかなんて思ってしまうけれど、実際体験してみると怖かった。
声をかけてきた二人は暴力的な感じがして、下手なことを言えば殴られそうな恐ろしさがある。
「やあ、私の連れに何かようかい?」
聞き覚えのある声に、真依は振り返った。
「太宰さん!」
真依は急いで太宰の背後に隠れた。
太宰が両手を広げ、真依を守る。
「残念だったね、この娘の連れは私だ。
すぐに立ち去るんだ」
「あぁ?
殴られてーのか、てめぇ!」
男の一人が拳を振り上げる。
すると太宰はふっと笑った。
「あっ!
あの子凄く可愛い!」
「マジで?」
「どこどこ?」
太宰に釣られ、男二人が振り向く。
その瞬間、太宰は男の手を引き離し、真依の手を取った。
「逃げるよ!」
「あっ、えっ・・・!?」
真依は混乱したまま手を引っ張られ、走り出した。
「てめっ、この野郎!」
男二人が血相を変えて追いかけてくる。
真依と太宰は手を繋いだままビルの中に入った。
素早く角を曲がり、身を隠す。
「馬鹿なのかい?
何絡まれてるのさ」
「す、すいません・・・」
それにしてもまさか自分がナンパされる日が来るとは思っていなかった。
まさに驚天動地とはこのことである。
「ちっ、どこだ・・・っ!」
角に男二人が見える。
真依は気になって覗き込もうとした。
すると太宰は真依の頭を胸の中に引き寄せた。
「あっ、あの、太宰さん・・・っ!」
声がうわずる。
近いどころの騒ぎではない。
完全に背後から抱きしめられている。
「黙って、見つかる」
口まで太宰にふさがれ、真依は目眩がした。
ドクンッ、ドクンッ、と激しい心臓の音が聞こえる。
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作者名:アオ x他1人 | 作成日時:2018年3月6日 23時