私のジミン先生。 (ページ16)

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「･･･なに？」

「ハンカチ、使ってください」

「は？･･･アンタばかなの？」

「バカでもいいです。でも、放っておけないから」

「同情のつもり？･･･そういうの余計なお世話なんだけど」

そう言いつつも、キム・テヒョンは
半ば自暴自棄な様子で私の手からハンカチを受け取って。

涙目だから威力半減ですよ。
そんな私の心を見透かしたのかもしれない。

「･･･一つ、提案なんだけど」

「なんですか？」

「俺のこと好きになれば？」

「･･････、は？」

･･･どうしよう。

今のが聞き間違いでなければ、
本当に訳がわからない。

「俺のこと好きになって？」

「ちょ、ちょっと･･･何言ってるの？」

「俺のこと好きになればジミナのこと諦めるでしょ？」

「は、はぁ？」

「うん！それで解決！」

俺ってば天才！
なんて声が静かな公園に響いて。

――私が、この人を、好きになる？

よく考えなくてもわかる。
絶対に、ありえない。

「貴方、気は確か？」

「うん。だってそうすればジミナはずっと俺のものでしょ？」

「そういうことじゃなくて、」

「じゃあ、どういうこと？」

コテン、と。
先ほどジミン先生に見せた仕草が目の前で繰り広げられて。

･･･ちょっと、可愛い。

なんて思ってしまった私の目を誰か覚まして。

「あんな酷いことされて、好きになると思う？」

「でも今までの女は全員落ちたよ？」

「は、はぁ･･･！？」

なんて爆弾発言。

私以外にも、
こんな卑屈な手口を使っていたなんて。

「だからアンタも一緒だと思った」

「そんな訳ないでしょ！？」

「･･･ふーん？」

「な、なに･･･」

急に色気を宿した瞳が
私の唇をなぞるように見つめて。

恐怖とは違う震えが一瞬、襲った。

「俺、強気な女の人、けっこータイプなんだよね」

「ッ･･、からかわないで」

「ま、いいや。はい、これ。社員証」

「え、あ･･･」

「･･･受け取らないの？」

それともまた会う口実にする？
なんて動く口が憎たらしい。

もう二度と会いたくなどない。
･･･そう思っているのに。

彼独特のペースに飲み込まれてしまう。