. ページ3
＿＿＿＿＿準備室の前、ドアノブを回そうと思って手を止めた。防音が成されていて二重になってるはずの場所からいつも漏れ出る騒がしい声も、今は聞こえない。
…私がここへ来ることを見越して、場所を変えてしまったのか。
そんな良くない想像が、どんどん膨らんでいく。マイナスへマイナスへ引っ張られて、抜けられない底のない沼に足を取られてるみたい。
今ここで中へ入って、みんなが居たらどうする？
きっと一斉にこちらを向いて、一瞬で空気が凍りつくに決まってる。それまで話していた笑顔の話なんて再開できるはずもなく、音のない時間が広がるだけ。
…そんなことはしたくない。
彼らの、彼らだけの楽しい時間の邪魔なんて。
決断すると行動は案外早くて、そそくさと準備室の前から立ち去る。
トイレに行こうかとも思ったけど、結局来たのは"理科室"だった。
思えば彼らと知り合うまで、ここが秘密の場所だった。
1人でご飯を食べるところを見られたくなくてトイレに行ったりもして、学校中探し回って見つけた場所。標本や人体模型と食べるお弁当にいつしか慣れて、ここも居心地が良いなんて思ったりした。
久しぶりに来たお昼の理科室は、午前中最後の授業の名残なのか何かを燃やした匂いがまだ少し残ってる。消毒液の匂いと混ざってそれがなんとも独特で、自分で言うのもなんだけどお昼には適していないと思う。
『…お、久しぶりだな』
理科準備室から出てきた理科の顧問は、物珍しそうな顔してこちらを見る。ここに来ていた頃は毎回そんな風に見られてたな、そういえば。
『友達出来たから、もうここには来ないと思ってたよ 笑』
そう笑いながら先生が出て行ったあとのドアを見つめて、お弁当を開く。あの先生には彼らとお昼を食べるようになってから授業以外で会ってなかったけど、私が彼らと仲良くしていたことを知っていたんだな。
蓋を開けたお弁当をしばらくボーッと見つめて、気付いたら泣いていた。声を上げてわんわん泣くことは出来なくて必死に拭いては流れてを繰り返して、結局お弁当はほとんど食べられなかった。
……『寂しい』って思った。
友達がいない、誰かに距離を置かれることが。初めて『寂しい』と思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
薄荷(プロフ) - みおさん» お返事遅くなり申し訳ありません…bio欄やプロフカード等確認して下さった上でもし許可されていないとなるとやはりどこか当てはまらない部分があるということだと思います…心苦しい所ですが本当に申し訳ありません…また何かありましたらご連絡くださればと思います。 (7月18日 1時) (
レス) id: a41569d7f5 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 薄荷さん» ご返信ありがとうございます。なるほど…。一応確認して見ましたm(_ _)m薄荷さんのプロフを確認して大丈夫な様に色々とやってみましたがいかがでしょうか？もう一度フォローリクしてみますがダメだったら諦めます( ；∀；) (7月11日 13時) (レス) id: 09dfc95e88 (このIDを非表示/違反報告)
薄荷(プロフ) - みおさん» コメントありがとうございます！Twitterですがフォローリクエストは定期的にチェックしていますのでもし許可がいかないということであればフォロー条件に当てはまらない箇所がある可能性があります…今一度プロフカード等チェックして下されば幸いです。 (7月11日 11時) (レス) id: a41569d7f5 (このIDを非表示/違反報告)
薄荷(プロフ) - amanonさん» いつもコメント本当にありがとうございます( ﾉД`)そのお言葉本当に嬉しいです…！是非とも何回も読んでやってください！！またお気軽に遊びに来てくださいね☺️ (7月11日 11時) (レス) id: a41569d7f5 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 宜しければ承認を宜しくお願い致します😌ちなみにTwitterアカウントは柚胡と申します。宜しくお願い致します😌 (6月23日 22時) (レス) id: 09dfc95e88 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：薄荷
| 作成日時：2022年9月28日 10時
