一軍ヤンキーと陰キャちゃん その6

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─────車のスライドドアが開く音がして、腕を引っ張られる。そのままどこかへ歩かされて、放り投げられた場所はコンクリートのようだった。視界を覆う為のバンダナを取られて、急に入ってきた光に目がチカチカする。


『…ふーん』

目の前にしゃがんでる男はいきなり髪を引っ掴んで顔を見ると、ふっと笑って手を乱暴に離した。反動で首が痛い。


『…あいつも好み変わったねぇ、笑
付き合ってるってほんと？ねぇ？深澤と？それとも違う奴？』


気持ち悪いほどニヤニヤしているのに、目が笑ってない。不気味な笑顔を固定させて質問してくる男に蔑んだ目を向ければ、急に笑顔が消えて平手打ちされた。


「…いっ、」
『何その目。舐めてんの？』
「……、」
『まぁいいや、餌にはなんだろ。写真でも送るか？』


澱みなく"餌"という言葉が出てきて、あぁ彼らをおびき出す為にここれ運ばれたのかと察しが着いた。脳が冷静なことに自分でも驚きながら、痛む頬を抑えているといきなり顎を掴まれて上を向かされる。


『助けに来てもらわないとね〜？』


触らないで欲しい。気持ち悪い。
離されてからふと、昨日一日の出来事が蘇ってくる。


言葉を交わしてくれなかった彼らの目は、酷く冷たかった。視線を合わせることすら避けたいと思われるほど嫌われてしまったことを、今になって思い出した。
…朝の電話は、なんだったんだろう。友達をやめようってことを、わざわざ言うための電話だったんだろうか。


……でも、良かったのかもしれない。
自分を餌にしても彼らが来なければ、喧嘩することも傷を負うこともきっとない。喧嘩している彼らも格好いいとは思うけど、怪我をしないに越したことはないのだ。
彼らが傷つかないのであれば、それでいい。勘違いして自分を拉致したこの人達をざま見ろとすら思うくらいに。


「…来ないですよ、」
『…なに？』
「来ないです、…嫌われてるので、来ません」


自分の口から言うと、余計惨めに感じる。
でも本当のことだから、どうしようもない。


『なに？嫌われてんの？なんで嫌われてんの？笑』


嬉しい情報でも耳にしたかのように、楽しげに顔を覗いてきた。

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