一軍ヤンキーと陰キャちゃん その6

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その一部始終を見ていた教室の人間がクスクスと笑う声がする。狭い空間の至る所で束になってニヤニヤとこちらを見る視線を、気にする余裕も今は無い。
呆然としたまま自分の席まで行く足の、なんて重いことか。




…何かしたんだろうか。無意識のうちに何か、彼らの気に障ることをしてしまったのかもしれない。嫌な気持ちになること、気持ちが引いてしまうこと、何をして何を言ってしまったんだろう。



考えても考えても答えなんて出なくて、ただただ時間だけが過ぎていく。教科書1つ持つ手にも力が入らなくて、何回泣きそうになったかわからない。
かと言って彼ら本人に聞く気になんて到底なれなかった。自分のせいなら、自分で原因を見つけないと意味がないから。



1人で机に向かっている間もずっと、通り過ぎるクラスメイト達のヒソヒソとした声がやけに耳に入ってくる。時にニヤニヤしながら、時にただの好奇心だけで話している声。



『え、なにあそこ仲良かったんじゃないの？』
『なに喧嘩？笑』
『知らね、笑
てか嫌になったんじゃね？久宝といるの』
『ずっとうざかったらしいよ。ほんとは離れたかったのに付きまとってたとか聞いた』
『え、気持ち悪、笑』
『あーそれで？笑』
『それは俺だったら無理だわ、笑』




＿＿＿＿あぁ、こうやって噂は1人歩きして、どんどん先へと進んで行くんだな。…こんなこと、よくあることじゃないか。今までだって何回も経験してきた。



…でももしかして、彼女達が言うことが全部本当だったら。


『ずっとうざかったらしいよ。ほんとは離れたかったのに付きまとってたとか聞いた』＿＿＿＿ずっとうざかった？それなのに、私が一方的に彼らと距離を詰めようとしていたのだろうか。…だとしたら私は最低だ。


嫌だと思われてるのに、察することができなかったなんて。


昔からずっと否応なしに実感してきたことなのに。空気を読んで察していかなきゃ、嫌われること。…でもそれに疲れたから、1人を選んだはずだったんだけどな。



いつの間に、"独りじゃないこと"に慣れてしまったんだろう。

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