一軍ヤンキーと陰キャちゃん その4

バレンタインのこと ページ31

(Thanks！絵美様！)

これは3月の、まだ進級前でテストも終わってみんな力が抜け始めた頃の話。


放課後、部活に行く人や帰る人をすり抜けてそそくさと靴を履き替えたら、向かうのは近くの公園。あのお馴染みのラブリーな所。今日は親子連れも数組居て賑やかだ。

「ごめんなさい、お待たせしましたっ、」

もう既に彼はそこにいて、こちらを見て笑った。

ラ「全然。むしろ急にごめんなさい」
「いやいや、」
ラ「どうしても直接渡したかったから、Aちゃんに」

立っているだけで絵になるスタイルのラウールくんに、お母様方からの視線は釘付けだった。それを一切気にせず距離を詰めて、紙袋を差し出した。

ラ「ありがとうAちゃん」

事の始まりは、1か月前。



────────────……

テスト期間もそろそろ2週間前に差し掛かり、みんなが焦り始める2月の真ん中。その日は朝いつも会う3人が3人とも用事があるそうなので1人で登校していた。
…しかし眠い。眠すぎる。
昨日結局寝たのは深夜3時過ぎだし、もう欠伸が止まらない。足もおぼつかなくて、何回もお弁当の他に持っていた紙袋を落としそうになる。

学校へ出向けばクリスマス以来、こんなにカップル居ましたっけ？状態で、そこかしこで女子からの真冬のプレゼントを贈っている訳だ。
今日は2月14日、バレンタインだから。

恐らくあの9人はかなりの量を貰うに違いない。
だから昨日は、まず作るところから悩んだ。私なんかが渡していいんだろうか。本命とか義理とかそういうのはまず全く関係なく、日頃の感謝の意を込めるという名目ではあるけど、それにしたってチョコはチョコなのだ。今日は彼らに本気で愛の告白をする女の子達がわんさかいる。そんな中で感謝のチョコを渡してどうするんだ全く。差し入れじゃないんだから。

そしてそもそも、私から渡すチョコが嬉しいと思ってくれるのだろうか。中には学校で1、2を争うような美人さんや誰にでも優しい小動物みたいな可愛い子もいるはずだ。
私があげて突き返すような人達じゃないことは百も承知だけれど、それは気持ちとは別問題で。

……う、嬉しい、かな。…これ…、

カバンの中に押し込んで隠した無地の紙袋を覗き込み、溜め息が漏れた。ついでに欠伸も。


─────────…

授業の10分休憩。飲み物を買いに1階に降りれば自販機よりも背が高いラウールくんがなんだか肩を落として歩いてる後ろ姿が見えた。

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