一軍ヤンキーと陰キャちゃん その2

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『ねぇ、なんで逃げるの？』
「…っえ、ちょ、」
『なんであんな奴らがいいの？Aちゃんが汚れちゃうじゃん。なんで？ねぇ、俺のだよね？俺のでしょ？』
「…や、やだ、まっ…痛っ、」


矢継ぎ早に言葉を話しながらどんどん距離が縮まってきて、肩を掴まれて公園のフェンスに叩きつけられた。


『あいつらなの？あいつらのせい？俺の方がこんなに好きなのになんでこっち見ないの？』
「…やだっ、やめて、…たすけ、いっ、…」


この距離になってやっと顔が判別できたけど帽子を深く被って眼鏡もしてるから分かりにくい。でも見た感じ少し年上っぽくて、学生ではないように思う。
怖い。ひっきりなしに紡がれる言葉が吐息と一緒に降りかかる距離で、肩を掴む力が強すぎて痛みで身動きが取れない。…怖い怖い怖い。連絡したくても叩きつけられた弾みで今日買ったものも全部手から離れてしまったし、カバンの持ち手を肩にかけたまま掴まれてるからスマホも取り出せない。
何より怖くて身体が震える。絞り出した声も細すぎて、どこにも届かない。


『Aちゃんだめだよ。あんな奴らと居たってどうせ捨てられちゃうよ？満足したらすぐどっか行っちゃうんだよ？身体だけの繋がりなんて許さないよ、』


今までも彼らとそういう仲だと勘違いしてる連中は多かった。その都度それを馬鹿にしたように笑われていたけど、誤解だったから流せていた。今だって誤解なんだけど。そんなことより。

……心の何処かで、ずっと抱えていた不安を引きずり出されたような感覚だった。


"どうせ捨てられちゃうよ？" "すぐどっか行っちゃうんだよ？"………




「……ない、」
『え？なに？』
「……そんなこと、ない…、」
『泣いてる？泣いてるの？Aちゃん？』
「…あの人達は…どこも、行かない…、」



そんなこと、とっくに分かっていたはずだった。でもそれを認めないでいることで、自分がまた裏切られた時の予防線にしていた。分かっていたのにいつまでも知らん顔してた。あの人達がどれだけ優しくて、手を離さないでいてくれる人か。

もし万が一向こうがそう思っていなかったら。その時は自惚れだと笑われてしまうんだろうか。
でも、それでもいいや。もう。
涙と言葉が溢れて、か細い声しか出なかった。




『…Aちゃん？ねぇ、…いって、』






渡「いい加減その名前呼ぶのやめろよ」

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