一軍ヤンキーと陰キャちゃん

ゲーセン ページ33

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『久宝さんおはよー』



＿＿＿誰だろう。女の子の声だ。中学の制服だけど大人っぽいふわふわと揺れる髪の毛は巻いているのか。私と挨拶を交わしてくれるんだな、優しい。顔は見えない。ぼやけて、見えにくい。



『久宝さんうちのグループ入る？』
『ほら、久宝さん。あなたから話しかけていかないから誰も話してくれないんだよ』



＿＿＿先生かな。面倒くさそうに話す女の先生と、仕方なく、という顔でグループに招き入れる先程の大人っぽい子。周りの人達の、怪訝とした迷惑そうな表情が見える。そうか、彼女は私が嫌いなのか。…ごめんなさい。グループを作るとなると一人でいる訳にもいかなくて、余った人間は数が合わないチームに入るしかなくなってしまう。嫌だよね、わかってるよ。
優しい貴女がそんな顔するんだから、よっぽどだね。




そんなに嫌われてるなら、話しかけないようにしよう。
そうして一人になれば、教師には"私が話さないから"一人でいると思われる。積極的に話さない、私が悪い。かと言ってグループに入れば入ったで、鈍臭いと散々難癖つけられる。
じゃあやっぱり、一人でいるしかない。だって、みんなの楽しい雰囲気を壊してしまっているんだから。




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿




…まただ。最近同じ夢ばっかり。幸せボケするなと、神様からのお達しかな。
起きてすぐに急激な吐き気に襲われて洗面所に走る。
この所毎朝だ。毎朝こんな調子で、朝食もろくに食べられていない。思い出したくもない記憶を引っ張り出してうなされて、夢というのは自分でコントロール出来ないからとても厄介だと思う。


『最低』
『友達のこと裏切ったってことでしょ？』
『うわぁ、自業自得じゃん』



違う。どれだけ声を上げても、誰も聞いてはくれない。いじめられっ子は言葉が通じない。ちょっと前に見たドラマでそんなことを言っていた。そうだ、まるでそこは異国なのだ。誰にも言葉が通じない。話をしても聞いてくれない。
『嫌なことは嫌だと伝えない方が悪い』とまで言われる。伝えたところで、誰がそれを聞いてくれるのか。誤解されたものはそのまま次々と噂が肥大していって、結局誰一人として味方がいなくなる。先生でさえも。




ふと、9人の顔が浮かんだ。
もし今同じ状況になったとしたら、彼らには言葉が通じるんだろうか。味方でいてくれるのだろうか。…いや、そもそも巻き込みたくはない。
色んな負の感情が膨らんで、振り払うように冷水で顔を流した。

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